食物アレルギー発症の新たな感作経路として経皮感作に着目し、感作成立と食物アレルギー発症機序を解明するとともに、これを制御し感作抑制と免疫療法へ活用していくことを目的として研究を行った。 平成26年度までの研究において、活性化VitD3をアジュバントとして使用した経皮感作による食物アレルギーモデルマウスを作成した。経皮感作群では従来の腹腔感作群と比して、抗原特異的IgE値の著明な上昇を認めたが、IgG1、IgG2a、IgAは低値にとどまり、異なる抗体価上昇パターンを示した。また初回の経口抗原チャレンジより強い低体温と下痢症状が誘発され、血清中mucosal mast cell protease- 1(mmcp-1)の上昇を認め、マスト細胞の活性化・脱顆粒を伴う即時型アレルギー症状が生じていると考えられた。反復経口抗原チャレンジ後では低体温が遷延するなど初回抗原投与時と異なる誘発症状のパターンを示し、多因子が複合的に関与している可能性が考えられた。 平成27年度に行った組織の解析では、反復抗原チャレンジで腸管粘膜の好酸球増加を認めたが、症状に相関した有意差は認めなかった。チャレンジ前後の血清中mmcp-1と誘発症状にはそれぞれ有意な相関があり症状の予測につながる可能性が示唆され、経皮感作による食物アレルギーモデルの誘発症状においてマスト細胞の活性化が重要な因子の一つである可能性が考えられた。 感作部位である皮膚のmRNA発現をGene Chipを用いて網羅的に解析した結果では、TSLP等のTh2反応に関与する因子等の上昇を認めており、今後はこれら皮膚局所で発現増強を認めた因子が、局所のみならず消化管粘膜等の免疫応答に及ぼす影響についても検討し、これらを制御することで、感作を抑制し誘発症状を改善させる方法を見出し、食物アレルギーの治療法へと発展させることを目的として研究を進める。
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