研究課題
若手研究(B)
自閉症疾患であるレット症候群の原因遺伝子産物であるMeCP2は遺伝子発現調節に関与する重要な転写調節因子である。これまで培養細胞やレット症候群モデルマウスを用いて標的遺伝子の同定が行われてきたが、自閉症病態の解明に結びつく標的遺伝子は見つかっていない。本研究の目的はレット症候群患者の皮膚繊維芽細胞からiPS細胞を樹立し、新規MeCP2標的遺伝子の同定及びその分子機能異常を明らかにすることである。本年度に実施した研究成果は、1, MeCP2の新規標的遺伝子LIN7Aを同定したことである。MeCP2はこれまで遺伝子の発現抑制に関与することが知られていたが、LIN7AはMeCP2により遺伝子の発現が促進することを発見した。この結果はMeCP2が発現抑制に働くだけでなく、発現促進機構にも積極的に関与していることが示唆されることから新たなレット症候群分子病態メカニズムが明らかにできると期待できる。2, 2名のレット症候群患者からiPS細胞株を樹立し、遺伝子発現異常を見出したことである。X染色体上の遺伝子であるMeCP2はiPS細胞樹立に際してX染色体不活性化(XCI)機構が解除されるのかどうかが重要な問題であったが、我々の樹立したiPS細胞ではXCIは解除されず、MECP2正常株と変異株がそれぞれ樹立された。これらの細胞を使用して発現マイクロアレイを行った結果、iPS細胞では発現差異は見られなかったが、神経分化誘導した細胞ではMECP2の変異の有無により多くの遺伝子の発現差異が生じることを見出した。今後、これらの遺伝子がMeCP2によってどのように調節されているのか、これらの発現差異が神経細胞機能にどのように影響しているのかを明らかにしていく予定である。
2: おおむね順調に進展している
①神経系の培養細胞を用いてLIN7AがMeCP2によって遺伝子発現が促進していることを明らかにできた。②レット症候群患者からiPS細胞を樹立してMECP2変異の有無により発現が変化する遺伝子を同定できた。
レット症候群iPS細胞を使用して①LIN7Aの発現異常と神経機能の異常を明らかにすること、②発現変化のあった遺伝子についてエピジェネティックな発現調節分子メカニズム及び神経機能を明らかにすることである。
消耗品費が少なくて済んだこと海外での学会発表を見合わせたこと発光量を測定できる機器である「Promega社、GloMax Luminometer」を購入し、エピジェネティクス解析をさらに進めていく。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件) 備考 (1件)
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