研究課題/領域番号 |
25860855
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
高島 茂雄 岐阜大学, 生命科学総合研究支援センター, 助教 (50537610)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ペルオキシソーム / PEX遺伝子 / ペルオキシソーム形成異常症 / 極長鎖脂肪酸 / フィタン酸 / プラズマローゲン / ゼブラフィッシュ |
研究概要 |
ゼブラフィッシュPEX遺伝子機能を破壊したモデルフィッシュを作出し、ペルオキシソームの発生へ影響を調べるために以下の3つの実験を行った。(1)PEX2とPEX16 mRNAに対するモルフォリノオリゴを設計しこれを受精直後のゼブラフィッシュ卵にマイクロインジェクションにより導入しPEX2, PEX16の機能が阻害された個体を作出した。それらの胚ではヒトのPEX変異患者で見られるような発生遅滞等の表現型が観察されたが、得られた表現型がモルフォリノによる非特異的な効果ではないことの確証が得られなかったため次に示すPEX遺伝子変異個体の作出を行った。(2)ゲノム内PEX2遺伝子に対するTAL effector nuclease (TALEN)を作成しマイクロインジェクションによる受精卵内への注入でPEX2遺伝子の部分的欠失が誘導されるのを確認した。TALENを注入した個体から産まれたF1世代にも欠失を持つ個体が一定頻度で現れることを確認した。F2世代以降で安定にPEX2ホモ欠失個体が得られるのでこれを用いて発生異常の解析を行う予定にしている。(3)変異個体における極長鎖脂肪酸等のペルオキシソーム代謝産物の測定を可能にするために液体クロマトグラフィー-質量分析装置(LC-MS)を用いた測定法の開発を行った。C14:0からC28:0までの極長鎖脂肪酸及びフィタン酸、プリスタン酸、プラズマローゲンを測定する系を開発した。正常ゼブラフィッシュ胚を材料として発生過程におけるペルオキシソーム代謝産物の測定を行い、それらが発生に伴って変動する様子を観察した。PEX2ホモ欠失個体が得られ次第極長鎖脂肪酸、フィタン酸等の蓄積状況を同方法で解析する予定にしている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
PEX遺伝子の機能阻害には当初モルフォリノオリゴを使用しており、予想される表現型も観察された。しかしながらモルフォリノオリゴが持つ非特異的影響と得られた表現型が類似していたため副作用である可能性を排除できなかった。また近年ゲノム編集の技術が急速に発展しゼブラフィッシュを使った遺伝子機能の研究ではモルフォリノオリゴの使用が推奨されなくなった状況も踏まえ、新たにTALENを用いてゲノム内PEX遺伝子の変異誘導を行うことでPEX遺伝子変異個体を作出する方法に変更した。TALENを利用することでPEX2遺伝子の変異を効率よく誘導できたためこれの系統化を順調に進めている。ペルオキシソーム代謝産物に関してはこれを測定、定量する方法を開発し、ゼブラフィッシュ胚由来の代謝産物も測定可能であることを確認した。開発した脂肪酸測定方法については論文を執筆中である。
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今後の研究の推進方策 |
作成したPEX2変異体を用いて発生異常の解析を行う。ヒトPEX遺伝子変異患者では特に脳の層構造形成が乱れることが知られている。これは神経細胞の移動障害が原因であるとの報告があるので変異ゼブラフィシュの経時的観察によりこれを明らかにする。 ペルオキシソーム代謝産物の異常な蓄積や現象が発生のどの段階で起こるのかを明らかにするために変異個体を材料としてLC-MSによる代謝産物の測定を行う。 ペルオキシソームにおける複数の代謝産物のうちどの代謝産物が発生異常の原因となるかを明らかにするために個々の代謝産物を添加した条件下で胚を飼育し発生異常への影響を調べる実験を開始する。
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次年度の研究費の使用計画 |
UPLC-MSによる代謝物解析方法の確立実験がスムーズに遂行できたためそれに関わる消耗品の消費量が予想より少なくなったため。 変異体における代謝産物の解析に当てた予算に追加して使用する予定。代謝産物の標準品購入費とする。
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