本研究はヒトペルオキシソーム形成異常症の病態解明を目的として、本疾患のモデルとなる疾患ゼブラフィッシュを作成し、表現型の解析から病態の発症過程および発症原因となる代謝産物を探ることを目的としている。前年度までに遺伝子編集技術(TALEN)を用いて原因遺伝子(PEX2)を破壊することでペルオキシソーム形成異常症疾患モデルフィッシュを作成し、系統化を行った。今年度は得られた疾患モデルフィッシュの解析を行った。変異した塩基数の異なる2タイプの系統について調べた結果、それらが強変異型と弱変異型の2タイプであることが明らかになった。強変異型のものは生後2週間程度で肝臓の褐色化を起こし、5-6週間程度で運動能力が低下し死亡する。一方で弱変異型のものは正常に発生が進むが、生後8-9ヶ月程度で遊泳不能となり死亡することが判明した。変異魚では組織内の極長鎖脂肪酸の蓄積を認め、これらの異常はペルオキシソーム病形成異常症の症状と同じである。現在変異魚がなぜ死亡するのかについて直接の原因を調べており、肝臓機能障害、脳機能障害の2点について解析を行っている。今後も引き続き組織学的、細胞学的解析を進め原因の特定を行う予定である。また、本研究ではペルオキシソーム病で影響を受ける代謝産物の測定方法の開発も同時に行い、前述の極長鎖脂肪酸に加えフィタン酸、プラズマローゲン等の代謝産物の測定方法も確立した。今後は同方法を用いて変異魚の様々な器官内、組織内の代謝産物を測定することで、異常代謝産物が蓄積する部位の特定も行う予定である。組織・細胞学的異常を認める部位と代謝異常が顕著な部位を集中的に解析し、病態の発症過程を明らかにしたいと考えている。
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