研究課題/領域番号 |
25860858
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
窪田 拓生 大阪大学, 歯学部附属病院, 助教 (40629135)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 小児科学 / 骨代謝学 / 骨粗鬆症 / くる病 / 骨石灰化 / スクレロスチン / 骨細胞 / 転写因子 |
研究実績の概要 |
将来の骨粗鬆症予防のために、小児期の獲得骨量を高めることは重要である。骨細胞は骨組織に最も豊富に存在する細胞であるが、石灰化における骨細胞の直接的関与は明らかではない。そこで、骨細胞が分泌するWntシグナルを阻害するスクレロスチンを鍵分子として、骨における石灰化分子機構を解明することが本研究の目的である。 骨芽細胞分化培養でスクレロスチン遺伝子のSOSTの発現上昇を認めるヒト骨肉腫由来株SaOS-2において、分化培養と維持培養での遺伝子発現をマイクロアレイにより比較検討した。発現増加を示した転写因子は70個であった。種々の方法により、SOST発現促進の可能性のある転写因子を20個に絞った。選択された候補の転写因子をヒト線維芽細胞に強制発現させ、SOST発現を評価した。7因子の導入で線維芽細胞でのSOST発現が増加した。さらに抑制的と考えられる因子を除外した結果、ATF3, KLF4, PAX4, SP7の4因子でSOST発現の誘導を認めた。また、培養4週間後には培養液中へのスクレロスチン分泌がELISAで確認された。さらに、PTH添加によりスクレロスチン濃度は培養4週で減少した。また低酸素培養下での誘導SOST発現は、正常酸素培養下と比し増加を認めた。 4つの転写因子の導入により、ヒト線維芽細胞におけるスクレロスチン発現誘導を実現した。その発現は既知のスクレロスチン調節因子であるPTHや低酸素により制御を受けた。この実験系がPTHや低酸素と関連したSOST制御機構の解明や創薬につながることが期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
スクレロスチン発現を誘導する4つ転写因子を同定した。さらに、これら4因子の導入により、培養液中でのスクレロスチン分泌を確認した。しかし、マウス骨細胞におけるこれら4因子の内在性発現はまだ検討できていない。また、骨石灰化異常症患者における血中スクレロスチン濃度と他の因子との関連が検討できていない。
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今後の研究の推進方策 |
マウス骨細胞におけるこれら4因子の内在性発現を免疫組織学的に検討する。アデノウイルス発現システムを用いて、頭蓋冠に4因子の形質導入を行い、in vivoにおけるスクレロスチン発現を検討する。また、4因子のmicro-RNAを用いて、スクレロスチン発現低下について検討する。その後、研究計画を遂行していく。 また、骨石灰化異常症患者の低リン血症性くる病などの症例を増やし、血中スクレロスチン濃度と他の因子との関連を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた、アデノウイルス発現システムを用いた分子生物関連の実験が実施できなかったために、26年度の研究費に未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
アデノウイルス発現システムを用いた分子生物関連の実験に必要な消耗品を購入し、27年度行う予定の研究計画と併せて実施する。
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