研究課題
(1)研究目的:脊髄性筋萎縮症(SMA)は最も頻度の高い致死性の運動ニューロン病で、95%以上にSMN1遺伝子の欠失を認めている。現在、いくつかの薬剤の治験が海外ですでに開始されている。SMAモデルマウスを用いた動物実験では、早期に治療が開始されるほど効果が高い事が証明されており、発症前治療が今後重要となる。本研究では濾紙血を用いた高解像度融解曲線分析(HRMA)法によるSMN1遺伝子欠失迅速診断法を確立する。HRMAは多検体を短時間・低コストで解析できる。また、濾紙血を用いる事により、先天性代謝異常症マススクリーニングのシステムを利用可能である。この事から、乾燥濾紙血とHRMAを組み合わせたSMAのスクリーニング方法の開発を目指すことにした。(2)研究計画:次年度(最終年度)も、乾燥濾紙血(ワットマンFTA Eluteカード―GEヘルスケアバイオサイエンス社)から抽出したDNAを用いて、HRMA解析が可能であるか否かを検討した。この時に、乾燥濾紙血の室温・暗所での保存年数、PCR条件(プライマーの塩基配列、サイクル数)を再度検討した。(3)研究結果:乾燥濾紙血は、室温・暗所で、1~8年保管されていたものを用いた。煮沸法で乾燥濾紙血から抽出したDNAでは、通常のPCR条件(30サイクル)では、全例HRMA解析は出来なかった。しかし、PCRのサイクル数を通常の1.5倍まで(45サイクル)まで引き上げることで、乾燥濾紙血の90%はHRMA解析が可能になった。なお、この時に用いたプライマーセットは、Lefebvreらが1995年に報告したR111プライマーと541C770プライマーである。(4)結論:乾燥濾紙血は長期保存に耐え、また、そこから抽出したDNAはHRMA解析が可能な質と量を有する。したがって、乾燥濾紙血とHRMAを組み合わせたSMAのスクリーニングは可能である。
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Clinical Laboratory
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Brain Dev
巻: 36 ページ: 914-920
10.1111/ped.12018.