研究実績の概要 |
iPS細胞を用いた再生医療に期待が高まる中、in vitro腎ネフロン構築については、その発生の複雑さと構成細胞の多種性により、他臓器よりも立ち後れている。本研究は、腎尿路発生異常を伴う先天性腎尿路奇形症候群(CAKUT)の原因遺伝子探査により、ヒトの腎発生必須遺伝子とその機構を明らかにし、その情報のin vitroネフロン分化誘導系への還元を目的とする。 平成26年度は、下記の3項目について実施した。1) 本邦CAKUT症例の収集・疫学調査:平成26年度までに、187家系206症例を収集した。腎外症状を伴うsyndromic CAKUTは105家系115症例、腎症状のみのnon-syndromic CAKUTは82家系91症例であった。2) 収集症例の臨床表現型分類、および次世代シークエンサー(NGS)/マイクロアレイを用いたゲノムワイド解析:-1. 症例中44家系62症例について、シークエンス解析により原因遺伝子(PAX2, EYA1, HNF1B, UMOD, OFD1, SALL1, CHD7)を、マイクロアレイ解析により責任遺伝子領域(染色体微細欠失:22q11.2、16q、1q21.1)を同定した。-2. 疾患パネルを用いたNGS解析により、臨床表現型から候補遺伝子の同定が困難であった症例についても、PAX2、UPK3A、FRAS1、EP300など、既報遺伝子やマウスのCAKUTで報告されている遺伝子などが候補となる症例も見つかった。3)機能解析(in vitroアッセイ系の構築):疾患関連候補遺伝子のうち、機能解析の報告が乏しいものにつき、患者由来細胞などを用いたin vitroアッセイ系を立ち上げ中であり、今後その結果を報告予定である。 これらの成果は、ヒトの腎発生に必須となる遺伝子および発生機構を理解する上で意義があり、重要な研究基盤を構築すると期待できる。
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