研究実績の概要 |
1,インフルエンザ肺炎モデルマウスの各臓器別TRX mRNA、TBP-2 mRNAの発現量と病理学的所見を比較した 。感染前ではTRX,TBP2共に肺での発現が最も多く、脳での発現量は低値であった。TRXとTBP2は肺と脾臓では感染3日目では発現が増加した。脳と肝臓では感染後に発現が低下した。腎臓ではTRXは感染後に発現が増加したが、TBP2は発現が低下した。TRXとTBP2は脳・肺・脾臓・肝臓での感染後の発現に相関を示したが、腎臓では逆相関を示した。 2,代謝異常型インフルエンザ脳症(Reye症候群様)モデルマウスを確立し、野生型マウスと比較した。(1)TBP2KOマウスに1と同様にインフルエンザ感染を行い、野生型マウスとの生存率・臨床症状を比較した。生存率に有意差は認めなかった。野生型マウスは肺炎を来たし死亡したのに対し、TBP2KOマウスでは肺炎像が軽微であった。TBP2KOマウスでは著明な脂肪肝を認めた。(2)感染後のマウス血清中のサイトカインを測定した。野生型では感染3日目にTNFαとCXCL1の上昇を認めたが、TBP2KOマウスでは上昇を認めなかった。 3,インフルエンザ脳炎モデルマウスを確立し、全身(血液)と局所(髄液)のサイトカインを比較した。(1)野生型マウスにインフルエンザを脳内に直接感染させ、生存率・臨床症状を確認した。(2)血液ではG-CSF,IFNγ,IL-12, MCP-1,IP-10,TNFαが上昇し、髄液ではIL-10,IL-13が上昇した。 4,核酸結合タンパクであるHMGB1(High-Mobility Group Box-1)はTRXと同様に複数のチオール基を有しており、細胞内においてレドックス制御に関与する一方で、細胞外では炎症性サイトカイン因子としての性質を持つ。インフルエンザ肺炎モデルマウスでは血清中に増加したHMGB-1が病態形成に関与しており、抗HMGB-1抗体が抗炎症作用・抗酸化作用により病態を改善することを証明した。
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