研究課題
若手研究(B)
1. ネマリンミオパチーを有する家系における原因遺伝子の同定:平成24年度までに集積したネマリンミオパチー患者の末梢白血球よりゲノムDNAを抽出し、エキソーム解析を行った。乳児重症型の罹患同胞2人、非罹患1人、非罹患の両親5人から成る日本人1家系から新規の候補遺伝子KLHL40に複合ヘテロ接合性変異を同定した。さらに日本、アメリカ、フィンランド、オーストラリアの国際共同研究により、ネマリンミオパチー家系に対しKLHL40の遺伝子変異をスクリーニングした。143家系中28家系(19.6%)から19種類の遺伝子変異を同定した。日本人では創始者変異により本遺伝子変異の検出率はさらに高頻度であった(27.7%)。2. KLHL40遺伝子変異の機能解析:タンパク質の結晶構造モデルから、本変異は機能的リピート上に存在し、化学結合を不安定化させ、ドメイン構造の維持に影響を与えることが予測された。リアルタイムPCRを行い、KLHL40は胎児および成人ヒト組織で骨格筋に強く発現していることを確認した。KLHL40は患者の筋線維でほとんど発現していなかったため、機能喪失が示唆された。モデル動物を用いた疾患検証のために、ゼブラフィッシュklhl40の機能を解析した。RT-PCRおよびin situ hybridizationからゼブラフィッシュklhl40はヒトと同様に筋肉、心臓および筋肉の前駆細胞に強く発現していることを認めた。ゼブラフィッシュ胚にモルフォリノアンチセンスオリゴを導入し、klhl40の機能を阻害させ、筋肉の発生に及ぼす影響を観察した。klhl40を機能阻害したゼブラフィッシュ胚では、筋線維間にギャップが生じ、筋線維の走行異常が認められた。電子顕微鏡画像からZ線の崩壊も観察されたため、KLHL40の機能喪失が疾患に関与することを明らかにした。
1: 当初の計画以上に進展している
既に新規のネマリンミオパチー責任遺伝子を同定し、ゼブラフィッシュ疾患モデルを用いた機能解析を含めて報告した。さらに責任遺伝子が未同定である症例の集積も進んでおり、当初の計画以上に進展している。
責任遺伝子が未同定のネマリンミオパチー症例に対し、エキソーム解析を行い新規責任遺伝子の単離を試みる。
症例の解析を当初の想定以上に効率よく行うことができたため。また、機能解析に用いたノックダウン試薬も、少ないターゲットで成果を上げることができた。責任遺伝子が未同定のネマリンミオパチー症例に対し、次世代シーケンサーを用いたエキソーム解析を行うための各種試薬の購入に使用する。ゼブラフィッシュの飼育、維持のための研究経費に使用する。研究成果を学会で発表するための旅費に使用する。
すべて 2013
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (4件)
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