検体は内側側頭葉硬化症(MTS)52例、非内側側頭葉硬化症(non-MTS)23例の海馬および扁桃体であり、MTSとnon-MTS間の臨床徴候の比較においては熱性けいれんの既往がMTSで有意に多かった(P=0.001)。性、てんかん発症年齢、手術時年齢、術前知能指数、頭部外傷・中枢神経系感染症の既往に有意差は認められなかった。 HHV-6のみならずその他の7種のヒトヘルペスウイルスも含めてreal-time PCR法による検出を行ったところHHV-6が75症例中27例と最も多く検出された(その他のヘルペスウイルスは0~4例の検出であった)。HHV-6ウイルスDNA量においてMTSとnon-MTS間の比較をしたところMTSで有意に高値であった(P=0.004)。 MTSにおいてHHV-6検出群と非検出群において宿主の遺伝子発現を比較したところ、海馬では有意差は認められなかったが、扁桃体においてMonocyte Chemotacti Protein-1(MCP-1)とGlial fibrillary acidic protein (GFAP)がHHV-6検出群で有意に高値であり、これらの遺伝子発現量とHHV-6DNA量は有意な相関を認めた。 これらの結果からHHV-6の検出されたMTSにおいてはHHV-6感染によるMCP-1やGFAPなどの宿主遺伝子発現の変化が疾患発症に関与している可能性が示唆された。 HHV-6は乳児期のcommon diseaseである突発性発疹の原因病原体であり、本疾患は基本的には予後良好であるが、時に熱性けいれんや脳症を合併することがあり、脳症の後遺症としててんかんを発症することもあり今後HHV-6感染に対する抗ウイルス療法や高サイトカイン療法がその後のてんかん発症予防につながる可能性が今回の研究結果により示唆された。
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