本研究では、霊長類モデル動物を用いた統合失調症や自閉症の病態の分子・神経回路的メカニズムの解明を目指す一環として、ヒトに近い社会性行動を持ち小型の霊長類で繁殖サイクルも早く、また、遺伝子操作が可能であるコモンマーモセットを用い、母体ウィルス感染(母体免疫活性化、maternal immune activation)により出生した仔の生後発達期における神経発生や組織形成にどのような影響を及ぼすかを調べる。 特に、妊娠期におけるウィルス感染という環境的なリスクファクターにより、通常、妊娠母体に備わっている普遍的な免疫応答に対し不均衡が生じた結果、出生仔脳に及ぼす変化について、マーモセット脳を用いて最初にin situハイブリダイゼーション法による遺伝子発現解析からアプローチし、げっ歯類には見られない霊長類特異的な変化を明らかにする。 平成25年度は、妊娠90日前後に擬似ウィルス感染させたマーモセットから出生した仔の生後24時間以内における脳神経系形成に関連する遺伝子群について調べた。調べた遺伝子は、脳内にある神経細胞やグリア細胞などの構成細胞間の細胞接着因子、神経細胞への軸索伸長を調節する因子、神経細胞の遊走や細胞の位置決定に重要な因子、クロマチン立体構造の局所的な制御に関連する遺伝子の発現を調節する因子、および脳発達に必須の遺伝子で言語発達と密接に関連する転写因子の遺伝子群の発現パターンや局在について調べた。
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