研究課題
若手研究(B)
[SNX2-ABL1、minor&major BCR-ABL1発現細胞株の樹立] レトロウイルスベクターを用いてSNX2-ABL1, minor BCR-ABL1 (p190), major BCR-ABL1 (p210) 融合遺伝子をマウスNIH3T3細胞に導入し、強制発現させた。各キメラタンパクの発現を抗ABL1抗体を用いたウェスタンブロッティングにより確認した。免疫沈降により各キメラタンパクを単離する手法も確立した。[マウスProB細胞株Ba/F3を用いたSNX2-ABL1の機能評価] 同様にSNX2-ABL1, minor&major BCR-ABL1遺伝子をIL-3依存性マウスProB細胞株Ba/F3に導入し、その機能についてBCR-ABL1と比較、検討した。minorおよびmajor BCR-ABL1と同様にSNX2-ABL1の導入によりBa/F3細胞にIL-3非依存性の増殖能が獲得され、SNX2-ABL1は白血病の発症、増殖にかかわる可能性が示唆された。SNX2-ABL1発現による細胞内タンパク質チロシンリン酸化パターンがminor&major BCR-ABL1と異なっていることもわかった。[SNX2-ABL1のチロシンキナーゼ感受性の評価] 上記のキメラタンパク質発現Ba/F3細胞株を用いて種々のチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)の感受性を評価した。TKIを培地中に添加し、WSTアッセイにより細胞増殖を、Annexin V-FITCを用いたフローサイトメトリーによりアポトーシスを解析した。SNX2-ABL1導入株はBCR-ABL1導入株に比してImatinibに対する感受性が低く、dasatinibに対して強い抵抗性を示したが、nilotinibにはほぼ同等の感受性を示した。研究代表者らはSNX2-ABL1キメラを有するB前駆細胞性急性リンパ芽球性白血病症例におけるDasatinib抵抗性を報告しており、その知見と一致するものであった。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画通りSNX2-ABL1、minor BCR-ABL1 (p190)、major BCR-ABL1 (p210) 発現細胞株を作成し、その細胞増殖能や細胞タンパク質のリン酸化について解析が終了した。キメラタンパク質の導入によりIL-3非依存的な増殖能を獲得したマウスproB Ba/F3細胞を用いてチロシンキナーゼに対する感受性についても解析し、SNX2-ABL1がBCR-ABL1に比してImatinibに対する感受性が低く、dasatinibに対して強い抵抗性を示すことを明らかにした。SNX2-ABL1の機能がBCR-ABL1と異なるという仮説を支持する結果が順調に得らてきいるだけでなく、チロシンキナーゼ阻害剤に対する感受性において大変興味深い結果が得られている。以上より当初の計画の通り、おおむね順調に進展していると考えている。
初年度の成果よりSNX2-ABL1はBCR-ABL1と同様に白血病の発症、増殖に関与することが示唆されたが、両者でチロシンリン酸化のパターンが異なること、チロシンキナーゼ阻害剤に対する感受性が異なることも明らかとなった。そこで本研究では今後SNX2-ABL1とBCR-ABL1の機能の違いに重点を置いて研究を進めていく。接合部位の配列から推測すると、SNX2-ABL1はABL1中のSH2ドメイン、SH3ドメインを欠いており、これがBCR-ABLとは異なるキナーゼ活性、チロシンキナーゼ阻害剤に対する感受性がもたらしている可能性がある。加えて、BCR-ABL1ではBCR部分によるdimerizationがABL1キナーゼの恒常的活性化に重要であることが知られているが、SNX2-ABL1におけるSNX2部分の意義については分かっていない。以上より、まずキメラ遺伝子の発現に伴う細胞内タンパクのリン酸化についてより詳細に検討するとともに、マイクロアレイを用いた網羅的遺伝子発現解析より行う。次に計算機シミュレーションによりSNX2-ABL1の構造を予測し、ドッキングシミュレーションによりImatinib, Dasatinibとの結合性を評価することで、構造と機能との相関を明らかにする。
仕様変更に伴い、一部試薬の購入、使用を先送りする必要が生じたため。次年度速やかに購入予定である。
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