研究課題/領域番号 |
25860908
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
杉山 裕一朗 名古屋大学, 医学部附属病院, 医員 (00637944)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 間葉系幹細胞 / 新生児低酸素性虚血性脳症 / 安全性 |
研究実績の概要 |
間葉系幹細胞を用いた細胞療法は様々な分野で臨床応用されつつあるが、新生児低酸素性虚血性脳症(HIE)に関しては未だ知見が乏しい。本研究では、新生児HIEモデルラットを用い、同種脂肪由来間葉系幹細胞(ASC)投与による、脳受傷マーカーへの影響について検討した。 ASCは、生後4-5週の同系GFP-Tgラットより採取・培養した。日齢7のWistar/STラットの左総頸動脈を結紮切離後、8%低酸素負荷を行って新生児HIEモデルを作製し(Rice-Vannucciモデル)、低酸素負荷24時間後にPBSまたはASCを右外頸静脈から投与した。低酸素負荷48時間後の時点で、脳切片を作成し、免疫組織学的にアポトーシスマーカーのactive caspase-3を評価した。受傷側の海馬歯状回におけるactive caspase-3の総陽性細胞数がコントロール群(n=7)24700±12800個、ASC群(n=6)28200±16700個であり、統計学的に有意差を認めず、急性期には効果が見られないとの結果であった。またこれは、低酸素負荷4時間後および24時間後にASCの腹腔内投与したモデルでも同様の結果であった。 次にASC投与後の各臓器への影響について検討した。各臓器への影響を検討するため、投与後死亡や呼吸障害などの症状が出やすい低酸素負荷4時間後にASCを投与し、投与15分後に安楽死させたのち肺・肝・腎の切片を作製して病理学的に検討した。ASC投与群の肺において、大血管における投与細胞の血栓を免疫染色で確認した。また血管内にフィブリン析出を認め、肺実質出血を強く認めた。ASCは静脈内投与により肺血管内で残存し炎症反応性変化および肺出血を惹起すると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画書に示した「効果の確認」「安全性の確認」は、投与後の体内動態まで確認しており多くの部分で達成している。「作用機序の解明」に関しても既に着手している。
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今後の研究の推進方策 |
ASC投与は、少なくとも新生児HIEには効果が乏しいと考えられた。また静脈内投与については安全性に問題がある可能性があり、投与後の炎症反応などの生体反応をさらに解明していく方針である。
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次年度使用額が生じた理由 |
比較的順調に実験は進んだが、安全性確認等の実験を優先したため、抗体購入等の予算が余ったため。
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次年度使用額の使用計画 |
前年度行えなかった抗体等の購入に使用する。
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