我々は新生児低酸素性虚血性脳症(HIE)モデルラットを用い、同種脂肪由来間葉系幹細胞(ASC)投与の安全性と効果について、骨髄由来間葉系幹細胞(BMSC)と比較し検討を行ってきた。平成26年度・27年度の成果において、①ASC投与は腹腔内投与・静脈内投与のいずれにおいても、短期的な脳障害改善効果を認めず、②BMSCと比べて投与後7日を超えても肺にとどまり、③特に低酸素刺激による受傷から4時間後と早期に投与した場合、病理学的に肺塞栓・肺出血を惹起する可能性があると報告した。 今回は、慢性期評価として、投与後死亡することなく静脈内投与を行える脳受傷後24時間後の細胞投与による脳軟化改善効果について検討を行った。新生児HIEモデルを作成し、低酸素受傷から24時間後にASSC、BMSCをそれぞれ1×10^5個を吸入麻酔下に静脈内投与し、受傷から14日後にMRIを用いてその梗塞体積を計測し評価を行った。結果は、ASC(n=7)119±84mm3、BMSC(n=6)73±28mm3、PBS(n=6)84±92mm3で、全ての群間で有意差を認めなかったものの、ASC投与群はむしろ梗塞体積が大きくなるとの傾向があった。 新生児HIRモデルラットの系において、ASC投与は脳障害を改善しなかった。
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