研究課題
【目的】神経発達障害の成因は、神経形態、神経伝達物質分泌や受容体制御等の遺伝的素因に加え、周産期の低酸素や感染、早産低出生、化学物質暴露等の子宮内環境による発症への関与が注目されている。医薬品は安全性試験を経るものの脳の発達や行動への影響には不明な点が多い。本研究では実験動物へ、ヒト妊娠中に汎用される薬剤を投与し、産仔の神経心理学的な発達特性と脳内生理の解明を目的とする。【方法】子宮収縮抑制剤および抗うつ剤投与マウス母体作成と産仔の行動解析を行った。交配成立後雌連続投与区:リトドリン塩酸塩常用量-高用量(100,500mg/kg経口投与)2群、抗うつ剤投与陽性対照区:フルボキサミンマレイン酸塩100mg/kg経口投与、対照区:同量の生食水を用いた。産仔の6,9,12週齢にオープンフィールド試験、13週齢に強制水泳試験を行った。脳を摘出し、前頭前野と海馬中心に脳由来神経栄養因子とミクログリアの免疫染色を行った。【結果】1)オープンフィールド試験にて、出生仔の総移動距離は、各群とも週齢が増すごとに減少した。2)リトドリン高用量群で、雄は9週齢、雌は6週齢の中央滞在時間が減少した。3)抗うつ剤投与群では性差を認め、9週齢の雄は中央滞在時間が増加し、6週齢、9週齢の雌では中央滞在時間が減少し、不安の高さを示す逆説的な結果であった。4)強制水泳試験では、抗うつ剤投与群に不動時間の高まる抑うつ傾向、リトドリン高用量群で不動時間の短縮傾向を示した。形態学的には、大脳皮質の層構造異常や限局的な萎縮は明らかではなく、静止型および活性型ミクログリアの局所定量分析では、有意な変化は確認できなかった。【結語】子宮収縮抑制剤投与群では、胎生期の母体薬剤投与が産仔若齢期の不安行動に影響する可能性を示唆した。しかしながら形態学的には有意な変化は確認できていない。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)
夜尿症研究
巻: 22 ページ: -
Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry
巻: 80 ページ: 2450-2458
10.1080/09168451.2016.1222267