研究課題
今年度は、新生仔豚仮死モデルを用いて、低酸素虚血負荷後6時間以内の脳血液量増加が病理組織学的脳障害の重症度に有意に関係することを発見し、報告した(Nakamura M et al, International Journal of Developmental Neuroscience 2015)。この研究成果から、低酸素性虚血性脳症(HIE)児において、ベッドサイドで行うことができる脳機能モニターの中で、脳波だけが生後6時間以内における脳障害重症度判定方法が有用とされてきたが、この研究成果から、近赤外分光装置を用いた脳血液量測定が新しい脳障害重症度判定に有用であることが示された。また、臨床研究では、HIE児における生後6時間から72時間におけるCBV、脳内Hb酸素飽和度(ScO2)と神経学的予後の関係について報告をした(Nakamura S et al,. Brain & Dev 2015)。この報告から、生後6時間以内の脳血液量が高値のものは、予後不良である中等症・重症度であることが示され、また生後24時間におけるCBVとScO2を用いた場合、予後不良判定が正確にできることも示された。これにより、CBVとScO2の2つのパラメーターを用いれば、低他院療法施行前に脳障害重症度判定を行えるだけでなく、治療後の生後24時間に治療効果判定も行える可能性が示唆された。今後、更に軽度、中等度、重度負荷における脳障害のパターン、低体温療法に対する脳循環パラメーターの変化の違いについて調べていく予定である。
2: おおむね順調に進展している
脳障害重症度判定方法の確立を目指している本研究では、今年度、負荷後6時間以内の脳血液量増加が脳障害重症度に有意に関係する事を示し、更に、臨床研究においても、生後6時間での脳血液量高値が予後不良を示唆することを発見した。このことにより、脳血液量測定が生後早期の重症度判定方法に有用であることが基礎研究と臨床研究から支持された。これにより、今後、本研究が大きく進展していくことが予想される。
今後、新生仔豚仮死モデルに対し、低体温療法を行い、低体温療法が及ぼす脳循環パラメーターへの影響について、負荷の軽度、中等度、重度のグループ間での違いを調べる。また、引き続き、臨床においても同様に、低体温療法の脳循環に及ぼす影響を調べる予定である。
実験がうまく進まなかった為
実験および物品購入にあてる。
すべて 2105 2015 2014
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 謝辞記載あり 4件)
Brain & Dev
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