研究課題/領域番号 |
25860911
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
中村 信嗣 香川大学, 医学部附属病院, 助教 (30437686)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 低酸素性虚血性脳症 / 脳血液量 / 時間分解分光装置 / 脳波 / 低体温療法 |
研究実績の概要 |
今年度は、軽度、中等度、重度負荷における低酸素負荷中とその後の脳血液量変化パターンに着目し、負荷中の脳循環パターンが、その負荷後の脳循環変化パターンに大きく影響していることを明らかにした。すなわち、負荷中の脳血液量低下が負荷前値以下となる重度負荷群では、負荷後の脳血液量変化は負荷後1時間と、3時間以降に二峰性の増加を示し、負荷中の脳血液量低下が負荷前値以上であった脳血液量中等度負荷群では、負荷後1時間以内に脳血液量増加は認めたが、その後は低下を示した。このように、負荷後の脳血液量変化パターンは、負荷の程度を大きく反映していることが明らかとなった。子宮内低酸素虚血負荷の定量的評価は、低体温療法適応決定のために、客観的診断指標として必要であることから、この負荷後の脳血液量増加パターンを定量的に解析することにより、これに応用できることが予想された。 また、中等度負荷群(n=6)に加え、低体温療法(HI)を中等度負荷群(n=6)に対して行い、HTがどのように負荷後の脳血液量、脳波変化に影響を及ぼすかを検討した。これまでに、脳活動抑制状態を反映する低振幅脳波持続時間(LAEEG時間)は、HTでは有意に延長されることが報告されたが、本研究では、低体温療法非施行(NT)群と比して、有意な延長は認めなかった。またNT群では、このLAEEG時間は脳血液量増加と有意に相関関係にあることを既に我々は報告したが(Nakamura S、Brain & Dev 2014)、HT群では逆相関の関係を認め、脳血液量は重症のものほど低下しやすい傾向を認めた。。これらの結果より、中等度脳障害では、HTによる脳波抑制延長の影響は少ない事が、脳血液量はその脳血管径調節機構の破綻により、HTによる血管収縮の影響を受けやすい事が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに目標実験頭数の8割程度を施行していること、また、データ解析も順調に進んでいる。その研究成果報告を論文投稿により達成していることから、上記のように考えている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、新生仔豚仮死モデルを用いて、追加実験を行う。また、病理組織学的、免疫組織学的脳障害評価を進め、その脳障害重症度と脳循環変化の関係を明らかにする。 今年度の研究結果をもとに、臨床においても低酸素性虚血性脳症児に対し、生直後から脳血液量の持続モニタリングを行い、特に生後6時間以内の脳血液量変化が生後1週間でのMRIによる脳障害重症度とどのように関係があるのかを明らかにしていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
追加実験を行う必要があることと、組織、免疫学的脳障害評価には時間を要するため
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次年度使用額の使用計画 |
追加実験にかかる基本的な物品費用に加え、上記のために必要な試薬などの備品などの購入を行う予定である。
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