研究課題
若手研究(B)
脳性麻痺に対する有望な新規治療法として、本学では『脳性麻痺児に対する自己臍帯血幹細胞移植の臨床研究』が進められている。本研究では、新生児低酸素性・虚血性脳障害モデルマウスを作製し、9.4T高磁場MRS測定を用いて臍帯血移植による神経再生メカニズムを明らかにすることを目的とした。まず、生後7日齢のNOD/SCIDマウスを用いて新生児低酸素性虚血性脳障害モデルマウスを作製した。右総頸動脈を一時クランプ後、低酸素環境下にて30分~120分晒しところ、再現よく脳障害を生じる時間が105分であることが分かった。モデル作製より24時間後、MRIを用いて脳障害の有無を確認した。T2強調画像にて、右大脳皮質から線条体にかけて虚血性病変を認めた。さらに正常マウスを用いてH-MRS測定(PRESS法)を行い、神経活動の指標となるN-アセチルアスパラギン酸(2.02ppm)、クレアチン(3.00ppm)、コリン(3.20ppm)のピークを測定することに成功した。今後、この測定条件にて脳障害モデルマウスの脳H-MRSを測定する予定である。行動学的評価はモデル作製より3週間後に行った。MRIにて脳虚血性病変を認めたモデルマウスはロタロッドテスト、バランスビームテストともに、健常マウスに比べ有意な増悪を認めた。このモデルマウスにヒト臍帯血細胞(1x10^6cells/100ul, 50nM Q-Dotでラベリング)を静脈内投与し、24時間、1週間、3週間後にサクリファイスを行った。移植細胞は、移植3週間後まで障害部位周辺に局在していることが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
本研究では、脳性麻痺モデルマウスを高い再現性で作製する事が重要となるが、低酸素負荷の時間を105分に定めることにより安定した成功率で再現する事ができた。MRIを用いた画像診断では、T2強調画像の撮像条件を調整することにより非常に鮮明な画像を得られた。つまり、ここまでの段階でモデルマウスの作製は順調に進展している。次に、H-MRS測定については、まずMRIで脳を撮像した後関心領域を設定するため、長時間測定が必要となるが、健常マウスでN-アセチルアスパラギン酸(2.02ppm)、クレアチン(3.00ppm)、コリン(3.20ppm)ピークを観測することに成功した。よってH-MRS測定の基本的な条件は定まったため、概ね順調に進展していると思われる。
ヒト臍帯血移植では、マウスの体内で移植した細胞を追跡するために、Q-Dotによるラベリングを行ったが、蛍光顕微鏡で観察する際、死細胞が発する自家蛍光と注意深く区別する必要がある。今後はQ-Dotラベリングとともに、ヒト抗原に対する抗体を用いて免疫染色を行い、さらに詳細な移植細胞の評価を進めて行く予定である。MRS測定に関しては、関心領域の設定を含めた1回の測定に30分以上要するため、測定中の脳障害マウスを生存させ続ける必要がある。これに関しては、マウスの体温を冷やさない道具を用いて温風を送り込むシステムを導入する事を検討中である。
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