研究課題/領域番号 |
25860916
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
近藤 友宏 大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 助教 (40585238)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 未熟児医学 / メタボリックシンドローム / 高血圧 / 腎臓 / 栄養管理 |
研究概要 |
本研究はIUGRモデルマウスを用いて、幼若期の特定の時期から低蛋白食を給餌させた場合の腎臓、メタボリックシンドローム発症リスク、中枢神経系への影響を明らかにすることによるIUGR新生児への適切な栄養管理法の開発を目的とした。初めに開始時期の異なる2種類(2週齢:栄養管理A、catch up growth達成時:栄養管理B)の栄養管理を設定するため、catch up growthの時期を特定した。低体重で生まれてきたIUGR新生児は6週齢で体重が追いつくことが明らかとなったため、栄養管理群Bを6週齢より蛋白摂取制限を行う群とした。妊娠期低栄養環境(IUGR群)および2週齢からの蛋白摂取制限(栄養管理A群)が新生児の腎臓の形態に与える影響について解析した。1日齢新生児の腎臓重量、腎臓体積、腎小体数、近位尿細管長、近位尿細管総体積はIUGR群で対照群と比較して有意に減少が認められた。4週齢では栄養管理の有無を問わず、すべての項目で有意差が認められず、母体低栄養環境によって新生児腎臓の発達遅延がおこり、4週齢までに発達遅延は解消されることが明らかとなった。また栄養管理は腎臓の発達を阻害しないことを明らかにした。EGFは1日齢で近位尿細管、4週齢で遠位尿細管に限局して発現しており、群間で差は認められなかった。血圧調整因子である、レニン、AGTの発現ついて検討した。それぞれ局在に群間の差は認められなかったが、発現の強さに差が認められた。レニンは1日齢では群間で差がなかったが、4週齢ではIUGR群で、8週齢では栄養管理A群で強い発現が認められた。AGTの発現は1日齢でIUGR群、4週齢で対照群と栄養管理A群、8週齢で栄養管理A群に強い発現が認められた。栄養管理によって血圧調整因子の発現に変化が見られたことから、将来的な高血圧発症リスクが変化する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定では初年度にすべての群で血圧測定、採材を終了する予定であったが、catch up growth達成の時期を慎重に見極める必要があったため、2種類の栄養管理群の採材が多少遅れることとなった。しかし、対照群、IUGR群では30週齢まで血圧測定、採材が終了しており栄養管理群についてもまもなく完了する。また次年度の実施計画であった病理組織学的検査と細胞増殖因子の変化についての解析の一部を前倒しで行っており全体での進捗具合はおおむね予定通りである。次年度の課題である腎臓に対する影響の解析のための採材、切片作製、各種染色、RNA抽出、蛋白抽出、これらを順調に進めており、次年度の実験計画にスムーズに移行できる状態である。
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今後の研究の推進方策 |
腎臓を用いて病理組織学的解析、細胞増殖因子や血圧調整因子関する解析を当初の予定通りに実施し、母体低栄養ならびに新生児栄養管理が腎臓に与える影響について検討する。また栄養管理群の30週齢での採材を速やかに実施し、前年度実施予定であった血液を用いた血液生化学的検査を実施する。IUGR新生児のメタボリックシンドローム発症リスクに栄養管理が与える影響を血圧、血糖値や中性脂肪などのバイオマーカー、腎臓の変化を総合的に考察することにより明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
前年度実施予定であった血液生化学検査を行わず、次年度に実施することになったため、血液生化学検査用試薬の購入予定分が次年度使用額として生じている。 平成26年度は蛋白含有量改変飼料摂取による腎臓に対する影響を解析するとともに得られた研究結果の発表を行う。新生児の腎臓を用いて腎小体数、近位尿細管長の測定や糸球体硬化指数 (GSI)の算出、尿細管間質線維化指数(IFTS)の測定をし病理組織学的変化を解析する。また細胞増殖因子であるEGF、TGF-βならびにrenin-angiotensin系のrenin、AGTについて生化学・分子生物学的解析を行う。さらにメタボリックシンドロームに関連するバイオマーカーの測定を行う。そのため主な研究経費としては血液生化学検査用試薬、蛋白解析用試薬、遺伝子解析用試薬などの消耗品購入費を予定している。
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