研究課題/領域番号 |
25860916
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
近藤 友宏 大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 助教 (40585238)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 未熟児医学 / メタボリックシンドローム / 高血圧 / 腎臓 / 栄養管理 |
研究実績の概要 |
本研究はIUGRモデルマウスを用いて、IUGR新生児の乳児期、小児期における適切な栄養管理法の開発へとつなげることを目的としている。本年度は30週齢のIUGRモデルマウスを用いて腎臓および肝臓の組織学的解析、血圧測定、血液生化学的解析を行い、メタボリックシンドローム発症リスクの変化についての解析を行った。コントロール群、IUGR群、栄養管理群(catch up growth を達成した6週齢から20週齢まで低蛋白食を給餌)のすべての群に20週齢から30週齢まで高脂肪食を給餌した。 結果:1)20週齢では3群間の体重に差は認められなかったが、高脂肪食給餌後の30週齢において栄養管理群は他の群に比べ、体重が軽くなっており、栄養管理により高脂肪食給餌による体重増加が緩和されていることを明らかにした。結果:2)30週齢の血圧はIUGR群で有意に上昇しており、その上昇は栄養管理群では認められなかった。昨年度明らかにした、栄養管理による幼若期の血圧調整因子の発現の変化が、高血圧発症リスクを変化させたと考えられる。結果:3)血液生化学検査の結果、栄養管理群は血糖値、総コレステロール値が低い傾向にあり、栄養管理によるメタボリックシンドローム発症リスクの低下が示唆された。中性脂肪や腎機能マーカー(BUN、CRE)には3群間に差はなく、また値も正常範囲内であった。結果:4)腎臓組織にマッソントリクローム染色を施し、線維化の傾向を調べた結果、尿細管間質線維化には大きな差が認められなかったが、栄養管理群では糸球体の青染部位が他の群とくらべ明らかに少なく、糸球体の硬化が緩和されていることが明らかとなった。また肝臓組織では、コントロール群やIUGR群において中心静脈周囲に大粒の脂肪滴が多数観察されたのに対して、栄養管理群では少数しか確認できず、肝全体としても脂肪肝の病態の軽減が明らかであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の栄養管理によってメタボリックシンドローム発症リスク低下の可能性が示唆されてきている。今年度行う計画であった、尿細管線維化の指数の測定、糸球体硬化指数ならびにレニンアンギオテンシン系の測定もおおむね終了しており、順調に進展していると考えられ、次年度の実験計画にスムーズに移行できる状態である。
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今後の研究の推進方策 |
尿細管線維化の指数の測定、糸球体硬化指数を速やかに完了させ、栄養管理による腎臓への影響を数値として明らかにし、またレニンアンギオテンシン系の蛋白解析も速やかに完了させる。栄養管理群と未管理群の腎臓にどのような変化がおこっているかを網羅的に明らかにするためDNAマイクロアレイを行い、高血圧予防、メタボリックシンドローム発症予防に関連する既知および未知の因子の発現変化について検討する。さらに各種行動解析を行い、catch up growth後の栄養制限が中枢神経系に悪影響を及ぼしていないことを検討する。これまで、そいて今後の研究結果を総合的に判断し、IUGR新生児の適切な栄養管理について明らかとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度一報の論文を学術雑誌へ投稿する予定であったが、次年度に実施することにしたこと、また研究の進み具合により実施する予定であったDNAマイクロアレイを次年度に実施することになったため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度は一部残っている蛋白解析を速やかに終了させた後、栄養管理群と未管理群の腎臓にどのような変化がおこっているかを網羅的に明らかにするためDNAマイクロアレイを行う。学内に必要な設備がないため外注する予定である。各種行動解析も実施するが、その解析に必要な設備は学内にそろっている。さら本研究で得られた成果を学会発表ならびに学術論文へ投稿する予定である。そのため主な研究経費として蛋白解析用試薬、マイクロアレイ外注費、論文投稿費を予定している。
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