最終年度にあたる平成28年度に実施した主な研究成果は以下の2点である。 1.巻絡モデルを用いた非定常血流解析:前年度に実施した捻転のみを再現したモデルに引き続き、巻絡も再現したモデルにおいて非定常流入条件による血流解析を実施した。コイル形状のら旋中心軸が一直線である捻転のみの流路モデルに対して、ら旋中心軸を半径3~5cmの円弧とし、巻絡を模擬した流路モデルを作成した。臍帯血管直径4mmに対して最大流速0.7m/s、周期0.4sの正弦波形を入口流入条件として与え解析を実施した。解析結果から、巻絡は断面内軸流速分布に対してはあまり影響しないが二次流れに対しては強い影響を及ぼし、巻絡を有する場合には断面の円周方向のみならず流路の軸方向にも有意な壁面せん断応力の変化があり、より局在的な分布を引き起こすことを明らかとした。 2.個別胎児臍帯血管モデル構築手法の検討:臨床医用画像を基に3次元リアリスティックモデルの作成を行うことを想定し、モデリング手法を検討した。提案手法は、画像より臍帯血管像を抽出し螺旋半径、動脈半径、螺旋の勾配角度の形態的特徴量を測定し、これまでに構築した理想モデルの内最も近似度の高いモデルをテンプレートとして使用し修正することによりモデル構築を行うものである。これにより効率的な個別胎児臍帯血管モデルの構築が可能である。 以上と前年度までの研究を含めた研究期間全体を通じて、臍帯血管形状の特徴である捻転、および、巻絡に着目し、それらの特徴的な形状が臍帯血流に及ぼす影響を明らかにした。これにより、より包括的で定量的な科学的根拠に基づく胎児状態評価を目指した診断指針・基準の再検討ならびに再整理をすることができた。また研究を通して提案・開発した技法をアプリケーションとして整備し、臨床医療現場への応用を志向した超音波臍帯血流計測シミュレータのプロトタイプを構築した。
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