申請者らは最近、マクロファージ遊走阻止因子に対するDNAワクチンがDS-NhとNC/Ngaという2つの異なるアトピー性皮膚炎モデルマウスの皮膚症状を改善することを示し、また、NF-κB阻害薬であるdehydroxymethylepoxyquinomicinがNC/Ngaマウスの皮膚症状を改善することを示すことに成功した。また、申請者の所属するグループにより、アトピー性皮膚炎患者の多くがフィラグリン遺伝子変異を有することも明らかにされた。本研究では、これら最新の知見に基づき、フィラグリンをターゲットにした新しい治療法の開発を目指すことにした。これまでも、アトピーにおける皮膚バリア機能の重要性は指摘されてきたが、本研究では、フィラグリン遺伝子のプロモーターを刺激し、患者皮膚でのフィラグリンの発現そのものを増やすことでアトピー性皮膚炎の治療が可能かどうか検討することを目指した。本治療法は、その作用メカニズムから、フィラグリン遺伝子変異をホモ接合性に有する患者には効きにくく、ヘテロ接合性に有している患者でより効果が高いことが予想される。我々は、約300人のアトピー性皮膚炎患者、及び約1000人の一般集団(アトピー性皮膚炎患者を含む)をフィラグリン遺伝子変異についてスクリーニングし、変異保有者の90%以上がヘテロ接合性に有していることを確認した。この結果は、アトピー性皮膚炎患者の大部分にフィラグリン遺伝子プロモーター刺激療法が有効であること、アトピー性皮膚炎の予防にも本治療が有効であることを示唆している。
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