研究課題/領域番号 |
25860929
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
赤坂 英二郎 弘前大学, 医学部附属病院, 助教 (30436034)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ケラチン6c / 掌蹠角化症 |
研究概要 |
掌蹠角化症は手掌・足底の過角化を主症状とする遺伝性皮膚疾患群である。近年、限局性の掌蹠角化症の新たな原因遺伝子としてケラチン6c遺伝子が発見され、申請者らは、びまん性と限局性の両方の表現型を示す日本人掌蹠角化症の家系で新規ケラチン6c遺伝子変異を同定した(Akasaka E et.al. Br J Dermatol 2011)。ケラチン6c遺伝子変異は、掌蹠の過角化を生ずるが、びまん性、限局性、正常の表現型を取りうる。そこで、申請者は、通常外来でみている胼胝や鶏眼などの症例で、実はケラチン6cの変異を有している患者が存在するのではないかと考え、本症の病態解明も含め、本研究を着想した。これまでケラチン6c遺伝子変異による掌蹠角化症は申請者らの報告を含めて5家系と非常に稀であり、この新規遺伝子変異について詳細な検討を加えた報告は極めて少ない。ケラチン6c の異常から過角化への新しい独創的な機序が解明されれば、角化症への理解もさらに深まると考えられる。申請者らは、掌蹠角化症の病態解のため掌蹠角化症患者からDNAを採取し、ケラチン6c遺伝子変異検索を行った。いくつかの新規変異や多くの一塩基多型が同定され、ケラチン6c変異による掌蹠角化症の表現型もある程度明らかになった。また変異ケラチン6cを発現する培養細胞を作成するため、野生型と変異型のケラチン6c発現ベクターを作成中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ケラチン6c遺伝子変異検索による掌蹠角化症の解析: 胼胝・鶏眼患者、および原因遺伝子が同定されていない掌蹠角化症患者・家族の末梢血白血球より定法に従ってDNAを抽出し、PCR法で目的とするケラチン6c遺伝子領域を増幅したのち、直接シークエンスにてケラチン6c遺伝子変異について解析した。現段階ではまだ症例数が少ないため、表現型と遺伝子型の相関については不明であるが、少なくともケラチン6c変異による掌蹠角化症の表現型は足底の限局性の過角化が多く、手掌は症状が軽微であり,爪甲変形は全くないかあっても軽症であることが示唆された。 ケラチン6cの生物学的特徴の解析: 培養ヒト角化細胞ではケラチン6c遺伝子発現は確認されたが、タンパク発現はみられなかった。転写後調節機構が関与していると考えられた。また、掌蹠角化症患者で同定された遺伝子変異(p.G472K)を有するケラチン6c遺伝子および野生型ケラチン6c遺伝子を培養ヒト角化細胞(HaCaT細胞)に形質導入し、変異型ケラチン6c発現角化細胞株の作製を目指す。現在、変異型および野生型ケラチン6c発現ベクターを作成中である。
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今後の研究の推進方策 |
掌蹠角化症モデルマウスの作成: 遺伝子検索で同定したp.E472K変異を有するケラチン6c遺伝子を発現させたトランスジェニックマウスを作成する。プロモーターはCMVのものとして強力に発現させる。同時に、野生型ヒトケラチン6c遺伝子を発現させるトランスジェニックマウスも作成する。この2系統のマウスを交配することにより、患者と同様にヘテロの状態を作成し、掌蹠角化症のモデルマウスを作製する。皮膚の変化を肉眼的、あるいは皮膚生検を行い組織学的に経時的に観察し、遺伝型と表現型の解析を行う。 siRNAをもちいた掌蹠角化症の遺伝子治療についての検討: 先に確立した変異ケラチン6cを遺伝子導入した培養ヒト角化細胞株において、siRNAを用いて変異ケラチン6c遺伝子のmRNA発現を抑制し、形態学的、機能的変化について免疫染色、免疫蛍光、RT-PCR、ウェスタンブロットで解析を行う。
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