担癌宿主において癌局所でのSTAT3の活性化が癌の進展に深く関与していることが多数報告されている。また癌局所での活性化STAT3(pSTAT3)は、腫瘍微小環境の免疫細胞に作用し、免疫抑制を誘導させることで癌免疫療法の効果を阻害していることが知られている。過去、我々はSTAT3阻害効果のあるGRIM-19タンパクとR9-PTD(タンパク細胞内導入ツール)の融合タンパクrR9-GRIM19を作成し、マウスの腫瘍株を用い、in vitro、in vivoにおいて強力な抗腫瘍効果を得ることに成功した。本研究では、ヒト型rR9-GRIM19タンパクを作成し、様々なヒト癌細胞株に対するヒト型rR9-GRIM19タンパクの抗腫瘍効果を検討し、STAT3経路を阻害する新しい分子標的治療を確立することを目標としている。 平成25年度にはヒト型GRIM-19タンパクとR9-PTD(細胞内蛋白導入ツール)の融合タンパクrR9-GRIM19(ヒト型)タンパクを作製、精製した(プラズミドを作製し、プラズミドをトランスフェクションさせた大腸菌を増殖させ蛋白精製を行った。)。 平成26年度にはヒト悪性黒色腫の細胞株を10種類ピックアップし、STAT3の活性化(pSTAT3)についてWestern blot法を用いて検討した。pSTAT3の高発現している細胞株と発現のない細胞株をさらにピックアップし、rR9-GRIM19(ヒト型)タンパクのin vitroにおける抗腫瘍効果(細胞増殖)について検討したが、両者に大きな違いが認められなかった。また、pSTAT3が高発現する細胞株にin vitroにおいてrR9-GRIM19(ヒト型)投与後のSTAT3下流遺伝子の発現レベルについてqPCRを用いて検討したが、想定できる遺伝子の発現レベルの低下は認められなかった。これらは以前、我々が行ったマウスの実験結果とは異なる物であった。
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