研究課題/領域番号 |
25860944
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
池谷 茂樹 浜松医科大学, 医学部附属病院, 助教 (40436936)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | フィラグリン / 天然保湿因子 / アトピー性皮膚炎 / 表皮バリア / 接触性皮膚炎 |
研究概要 |
我々は、フィラグリンモノマーを表皮に過剰に発現するトランスジェニックマウス(FLG-TGマウス)を作成した。このマウスにおいて、過剰に発現したモノマーは、早期に分解を受け、過剰のNMFに置き換わっていることが想定される。 1)ゲノムDNAを抽出しPCRにより挿入したDNA断片の同定を行った。野生型であるC57BL/6jマウスでは、379bpのPCR産物は得られなかったが、FLG-TGでは、目的のサイズのPCR産物が得られた。 2)生後3日目のFLG-TGマウスとC57BL/6j、DBA/2マウスの背部皮膚からRNAを抽出、cDNAを作成し、SV40を含むFLG-TGマウス特異的配列にてRT-PCRを施行した。FLG-TGマウスでは目的の338bpのPCR産物を得たが、野生型では認めなかった。 3)フィラグリンの発現を、生後3日目のマウスの背部皮膚を用いてウエスタンブロット法にて比較したが、差は認めなかった。 4)マウスの背部の皮膚、尻尾を用いて、HE染色と走査型電子顕微鏡で組織・形態学的検討した。FLG-TGでは角層が密で剥離が目立っており、過剰に発現したフィラグリンモノマー、NMFの影響による表現型の違いの可能性が示唆された。 5) FLG-TGマウスにおいて、過剰に発現したフィラグリンはすぐに分解され天然保湿因子(NMF)となる可能性が高い。そのためフィラグリンの分解産物であるNMFの産生量に差があるのか測定した。生後3日目のマウスを用い、セロハンテープにて角層を剥離し、蛍光分光計/OPA法により水溶性アミノ酸量、高速アミノ酸分析計/NIH法により水溶性アミノ酸量を測定したが、C57BL/B6マウスと比較し、Filaggrin Tgマウスでは角層アミノ酸量に変化はなかった(DBA/2マウスでは角層アミノ酸が増加する傾向)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
フィラグリンモノマーを表皮に過剰に発現するトランスジェニックマウス(FLG-TGマウス)の作成は、遺伝子、mRNAレベルでは確認でき、組織・形態学的には野生型との差を認める。しかしながらフィラグリンそのものの産生やその分解産物である天然保湿因子の量には明らかな違いを確認できておらず、引き続く表皮バリア機能や免疫応答実験にすすめていない。
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今後の研究の推進方策 |
スピードコンジェニック遺伝子解析にてFLG-TGマウスのC57BL/B6マウスへのゲノム置換率93.8%:Mixed backgroundであり、Incipient congenic (96.9%)には達していなかった。 従って、 1) Filaggrin TgマウスのC57BL/B6とのBackcrossを進め、ゲノムの置換率を上げたマウスでFilaggrin発現量の差を調べる。 2) その上で角層アミノ酸量の比較を再度行い、 その上で皮膚のバリア機能や経皮的免疫応答の違いについて研究をすすめていく。
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