研究課題
我々は、フィラグリンモノマーを表皮に過剰に発現するトランスジェニックマウス(FLG-TGマウス)を作成した。過剰に発現したフィラグリンモノマーは早期に分解を受け、過剰の天然保湿因子(natural moisturizing factor; NMF)に置き換わっていることが想定される。このマウスにおいて、角層バリア機能と皮膚免疫機能を評価し、フィラグリンモノマーとその分解産物であるNMFがアトピー性皮膚炎の発症にどのように関わっているか検討する。FLG-TGマウスの作成は、DNA、mRNAレベルでは確認できたが、組織・形態学的には野生型とは明らかな違いはなかった。またフィラグリンそのものの産生やその分解産物である天然保湿因子の量にも明らかな違いを確認できず、引き続く表皮バリア機能や免疫応答実験にすすめなかった。そこでC57BL/6マウスへのゲノム置換率を上げた(96.9%のIncipient congenic)FLG-TGマウスのホモ接合を作成し、解析をすすめた。FLG-TGのホモ接合と思われる個体では、有意に経表皮水分喪失量(TEWL)の低下を認めた。さらにTEWLの低下した個体において、低分子量色素(Lucifer yellow:分子量552)の角層透過性が阻害されていた。したがってFLG-TGでは皮膚バリア機能が亢進している可能性が示唆された。一方角質水分量はむしろ若干減弱しており、NMFが過剰に産生されているかは、bleomycin hydrolaseなどの酵素活性を含めて厳密に判断していく必要がある。今後の課題として、皮膚バリア機能の亢進が経皮的な免疫応答に与える影響を検討していく予定である。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
J Allergy Clin Immunol
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http://dx.doi.org/10.1016/j.jaci.2014.07.054
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