創傷時の表皮、間葉系細胞、炎症細胞の遊走に対する細胞外マトリックスの関わりを知るために、創傷部位に一過性に出現する代表的プロテオグリカンであるバーシカンに着目した。その分子の働きを解析することで創傷治癒の分子機構を解明する目的で本研究を行った。 方法としてマウス線維芽細胞を用いてRNAi法によってバーシカン発現を抑制した際に遺伝子の発現に変化が見られた分子をマイクロアレイ法にて同定する方法を試みた。その結果、興味深い分子候補としてCcl6、Srpx2、Smoc2の3つの発現が著明に上昇した。これらは炎症細胞の遊走や血管新生に深く関わる分子でありバーシカンはこれらを介して創傷治癒を調節している可能性が考えられた。最終年度は、RT-PCRでの確認をすませたのち、実際にマウス背部に創傷を作成、その創傷治癒過程でSrpx2の発現とバーシカンの発現時期、部位の関連を免疫組織化学法で染色し詳細に検討した。その結果Srpx2の発現との逆相関は明らかではなかった。時間的経過を細かく、より長期間観察するなどの改善策検討中である。またバーシカンRNAiを創傷局所に投与する方法での効果の検討は、バーシカン発現抑制効果が明確には得られておらずマウス創傷モデルを使用しての研究は中断している。本研究を通じて今後は、発現が大きく変化した分子以外にも候補を拡げ中程度の変化を起こした分子もマイクロアレイで抽出する。そして、最も生理的意義を反映していると思われる創傷治癒部位の免疫組織染色にてその発現の増減をファーストスクリーニングとする方針にて研究を発展させてゆく予定である。
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