研究課題/領域番号 |
25860954
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
鍬塚 大 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (90437864)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ケロイド / HDAC阻害剤 / エピジェネティクス |
研究概要 |
肥厚性瘢痕・ケロイドでは病変部に細胞外マトリックスの過剰沈着が認められる。本研究ではエピジェネティクスの代表分子であるhistone deacetylase (HDAC)に着目した。ケロイド組織由来細胞と正常皮膚線維芽細胞にHDAC阻害剤を添加し、細胞数やアポトーシスの検討を行い、細胞外マトリックスや転写因子の遺伝子発現をin vitroで検討した。まず、HDAC阻害剤としてTrichostatin A (TSA)と Suberoylanilide hytdroxamic acid (SAHA)を用い、濃度と反応時間を振り分け、ケロイド細胞と皮膚線維芽細胞の細胞数をカウントした。その結果、いずれの細胞でも濃度依存性および時間依存性に細胞数が減少した。またMTS assay法では濃度時間依存性にシグナル値が低下し、アポトーシスが誘導されていることが示唆された。上記実験の結果から、TSA,SAHAともに0.6μM、反応時間1日を至適濃度反応時間と判断した。次に、ケロイド細胞と皮膚線維芽細胞を2サンプルずつ培養後、TSAを上記至適濃度反応時間で添加し、RNAを採取後マイクロアレイで解析を行い双方の遺伝子発現を比較した。その結果、2サンプルで共通してケロイド細胞特異的に発現が変動した遺伝子を747種同定した。中にはWnt3AやADAM8などが含まれていた。GO解析やNLP nework解析では、Wnt signalingやACE inhibitor pathway経路に関する遺伝子発現が増加しており、DNA増幅やcell cycleに関与する遺伝子発現が低下していた。続いて、Biobase社ならびにCytoline solutions社による遺伝子カスケード解析を行い、上流の遺伝子発現を検討した。その結果、CEBPA, CBPなどの因子が上流に関与していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
HDAC阻害剤による遺伝子変動は広範囲に及ぶことからケロイド特異的な遺伝子の候補を選択するためのマイクロアレイデータの解析に時間を要したため。
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今後の研究の推進方策 |
1. マイクロアレイを複数回行い、得られたデータの再現性を確認する。次にマイクロアレイのデーターを元にサンプル数を増やし、Wnt3AやADAM8などケロイド特異的に変動した遺伝子のmRNA発現を詳細に検討する。またWestern blot法などで蛋白レベルでの変動を確認する。また、候補遺伝子の特異抗体を購入し、免疫染色を行いin vivoでの発現の有無を検討する。 2. Wnt3AやADAM8などケロイド特異的に変動した遺伝子の機能を解析する。候補遺伝子のsiRNA作成による発現抑制、もしくは遺伝子発現増強を行い、細胞外マトリックスや線維化に関与する因子の発現の変化をマイクロアレイなどで評価する。 3. Ex vivoケロイドモデルマウスを用い、HDAC阻害剤の濃度を振り、連日3-4日間局所に投与する。その後マウスの皮下に埋め込んだケロイド組織を経時的に採取し、膠原線維や細胞外マトリックスの発現を免疫染色で検討し、mRNAの発現もRT-PCR法で評価する。同時に、In vitro条件下で得られたWnt3AやADAM8などのケロイド組織特異的な遺伝子の発現がex vivoでも変動しているかRT-PCR法で検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
H26年度もマイクロアレイを複数回行い、ケロイド特異的に発現している候補分子の再現性を確認する。ケロイド特異的な遺伝子の発現を検討するため、プライマー、プローブのデザインが必要である。次に、siRNAの作成や導入などに費用を要する。また、Ex vivoモデルマウスの維持費が必要である。 マイクロアレイ100万円、プライマー・プローブのデザイン30万円、siRNAの作成・導入85万円、Ex vivoモデルマウスの維持費80万円
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