研究実績の概要 |
エピプラキン(EPPK)の動的機能を探るべく、EPPK欠損マウス(EPPK-/-)を作成した。その創傷治癒過程を電子顕微鏡で観察した結果、ケラチンの発現様式は野生型マウスと変わらなかったが、EPPK欠損マウスでは、ケラチン線維が細くなり、細胞全体にびまん性に分布する傾向を認めた。この結果、この分子は表皮細胞に機械的ストレスが加わる際、ちょうど傘の骨格のようにケラチン線維を束ねて補強すると考えられた(Ishikawa, et al, J Dermatol Sci, 2010)。またEPPK-/-マウスでは、皮膚の創傷治癒過程において表皮細胞の遊走が早くなることが判明した(Goto, et al Mol Cell Biol, 2006)。そこで、EPPK発現低下させたHeLa 細胞(EPPKlowHeLa)では、細胞の遊走能、増殖能がどう変化するかを調べた。その結果、EPPKlowHeLa では、E カドヘリンの発現量、分布などには変化が見られなかったが、アクチンの細胞内局在が変化し、細胞接着斑の低下が見られた。ビメンチンについても、EPPK欠損マウスの創部表皮細胞と同様に、細胞骨格が、放射状に配向せず、核周囲に局在する傾向が見られた。細胞運動能について、微速度顕微鏡撮影装置で観察した結果、運動能の亢進が認められた。増殖能については、対照と比較してEPPKlowHeLa では、明らかな細胞増殖能の増加は認められなかった。 個々の細胞ではEPPKは、中間径フィラメントと相互作用をしているが、三次元培養下での内腔形成のないHeLa 細胞塊では、その細胞塊の外側に、タイト・ジャンクションの一成分であるzonula occludens(ZO)-1 と共局在することが明らかになった。 角膜との比較では、角膜では基底層に主としてEPPKが発現するのに対して、皮膚ではほぼ全層に発現した。またEPPK欠損マウスの角膜を擦過すると、野生型に比べて、角膜上皮が剥離しやすかった。このことは、EPPKが細胞接着にも関与することを示唆した。
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