研究課題/領域番号 |
25860962
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
山口 由衣 横浜市立大学, 医学部, 講師 (60585264)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | Caveolin-1 / Psoriasis / STAT3 |
研究実績の概要 |
乾癬患者の表皮ではCaveolin-1(Cav-1)が有意に低下していることを明らかにしたため、ヒトケラチノサイトを用いた培養系においてRNA干渉によりCaveolin-1(Cav-1)発現を低下させた。それらの細胞はJAK2/STAT3 pathwayを活性化させ、さらに、ケラチノサイトの増殖に関わるKRT16や、IL-6,CXCL8,9,CCL20などのサイトカイン・ケモカインの発現を上昇させた。一方で、乾癬関連のサイトカインであるTNFαやIL-17A,IL-22はケラチノサイトに作用してCav-1発現を低下させた。よって、乾癬の炎症自身がCav-1を低下させることで、さらなるケラチノサイトの活性化を引き起こしていると考えられた。その後、イミキモドを用いた乾癬モデルマウスを作成し、表皮におけるCav-1の低下を確認した。Cav-1の機能的ドメインを含むCSDペプチドをイミキモドと一緒に皮下注することで、マウスの皮疹は著明に改善し、表皮肥厚、炎症細胞浸潤を抑制した。さらに、CSDペプチド投与により、マウスの表皮におけるpSTAT3陽性細胞は著明に減少し、真皮におけるTNFα、IL-17A、IL-23p19の発現が有意に低下していた。よって、CSDペプチドなどによりCav-1発現を制御することは、乾癬の新たな治療戦略になり得ると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
RNA干渉法を用いてCaveolin-1発現を低下させたヒトケラチノサイトを使用し、培養系実験でそのシグナル伝達やサイトカインプロファイルの解析を行ったが、ほぼ順調に安定した結果で解析を終えることができた。その後、イミキモドを用いた乾癬様皮膚炎を呈するモデルマウスを作成し、その表現型の解析を行ったが、このマウス表皮でもCaveolin-1発現が有意に低下していた。さらにCaveolin-1 Scaffolding domain (CSD)ペプチドを投与することで皮疹の改善を認めており、さらなる解析を進めている。よって、現在のところ進行は順調である。
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今後の研究の推進方策 |
当初H27年度に予定していたCav-1ノックアウトマウスを用いた解析は、イミキモド誘発の乾癬モデル作成には適切でない可能性が高く計画を変更する。引き続き、現在使用しているイミキモド乾癬モデルマウスに対してCSDペプチドを投与することでの効果を検討する。CSD投与の方法として皮下注のほか、腹腔内や外用を考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
試薬代が予定よりかからなかったため
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次年度使用額の使用計画 |
イミキモドを使用した乾癬様皮膚炎マウスモデルに対して、caveolin-1 scaffolding domain (CSD)ペプチドを投与することで、皮疹やサイトカインプロファイルの改善を認めているが、今後は、CSDペプチドのより良い投与法の検討を行っていく計画を立てており、その際の試薬代として使用する予定である。具体的には、CSDペプチドの腹腔内投与を予定しているほか、より低分子のCSDペプチドを合成して外用薬として作用できるかを検討する予定であり、特にCSDペプチドの合成には費用がかかる。
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