昨年度までの研究において、カベオリンのScaffolding domainを含むCSDペプチドを乾癬モデルマウスに皮下注することで、イミキモド誘発性の乾癬様皮疹が抑制された。このペプチドの投与をイミキモドの外用開始より数日遅れさせ、乾癬様皮疹が出現してから投与を開始しても抑制効果があるかを検証した。その結果、CSDペプチド投与群は、コントロールペプチド投与群に比較して有意に皮疹を抑制した。さらに、真皮においてTNFαやTh17関連サイトカインの発現を低下させた。また、興味深いことに、CSDペプチド投与部位においてカベオリンのmRNA発現低下は解消されていた。つまり、CSDペプチド投与により乾癬の炎症が落ち着くことによって、カベオリン低下を誘導する因子がなくなり、カベオリン発現の正常化につながったと考えた。このことより、CSDペプチドは乾癬皮疹の治療につながる可能性がある。また、乾癬患者は肥満のリスクが多く、肥満は乾癬を悪化させると言われているが、このメカニズムにカベオリンが関与するかを検討した。脂肪細胞より分泌される悪玉アディポカインのレプチンは乾癬患者で発現が上昇している。このレプチンで表皮細胞を刺激しても有意な変化はなかったが、カベオリン発現を低下させた表皮細胞では表皮細胞からのケモカインやIL-6の発現が有意に増強した。この増強はCSDペプチドによって抑制された。よって、カベオリンの発現低下は、肥満による乾癬の悪化のメカニズムにも関与している可能性がある。
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