研究実績の概要 |
4箇所の胎児皮膚(頭部、背部、腹部、足底)から分離、培養した胎児メラノサイトを、それぞれメラノサイト分化増殖溶媒を用いて培養し、メラノサイトの分化の過程をin vitroで再現することを試みた。メラノサイト分化増殖溶媒はmedium254(Cascade Biologics)にHuman Melanocyte Growth Supplement(Cascade Biologics)を添加したものに、Stem Cell Factor, Endothelin-3, Phorbol ester 12-O-tetradecanoylphorbol-13-acetateを添加して作製した(Li L, J Cell Sci, 2010)。培養による胎児メラノサイトの分化は確認できず、胎児メラノサイトの分化には未知の因子の作用があることが示唆された。メラノブラストからメラノサイトへの分化に必要な因子を調べるため、マウス由来のメラノブラストを用い、紫外線照射による活性化を調べた。マウスメラノブラスト(NCCmelb4)は聖マリアンナ医科大学 皮膚科 相馬良直先生から頂いた。分光器(日本分光株式会社 CRM-FD型 多波長照射分光器)を用いた紫外線照射によりメラノブラストの分化に最適な紫外線波長および照射間隔を同定し、Exp. Dermatol.に報告した(in Printing)。また採取した胎児皮膚(胎生13週~22週)をHMB45, MITFなど各種抗体で免疫染色し、胎生期におけるメラノサイトの遊走過程を解明した。足底皮膚では胎生早期に汗管形成以前にメラノサイトが汗管発生部位に到達し、汗管の伸長と共に深く入っていくことを明らかにし、J Dermatol Sci.に報告した(J Dermatol Sci. 2015 May;78(2):143-8.)。エクリン汗腺にメラノサイト幹細胞が存在するとする近年の報告を裏付けるものであり、ヒトでの研究は初めてである。
|