研究課題
若手研究(B)
当院で解析した腫瘍随伴性天疱瘡(PNP)は1997年~2013年で計104例であり、臨床症状は記載のあった83例中79例で口腔粘膜病変を、34例で眼病変を、7例で鼻腔病変を、27例で性器粘膜病変を認め、粘膜のみに症状を認めたのは24例であった。皮膚病変が見られた59例では37例で紅斑、24例で水疱、9例で尋常性天疱瘡様皮疹、4例で扁平苔癬様皮疹が見られ、13例は多彩な皮膚病変を呈した。随伴腫瘍は悪性リンパ腫43例に次いでCastleman腫瘍14例、固形癌12例、胸腺腫8例、肉腫6例であった。病理組織学検査を行った61例では32例で表皮内水疱、9例で表皮下水疱、36例で表皮棘融解、28例で表皮細胞壊死を認めた。DIFを行った52例では43例で表皮細胞膜にIgGあるいはC3の沈着を、34例で表皮基底層部への沈着を認めた。ラット膀胱上皮を用いたIIFでは抗細胞膜IgG自己抗体が69例で検出され、抗基底膜IgG自己抗体は4例で検出された。ヒト表皮抽出液を基質とした免疫ブロット法(IB)では全例が210kDaと190kDaに反応し、10例で230kDaに、10例で130kDaに、4例で180kDaに反応した。KU8 cell lineの培養細胞抽出液を基質とした免疫沈降法(IP-IB)では解析した50例中11例が450kDa(エピプラキン)に反応し、また培養ヒト表皮細胞抽出液を基質としたIBでは解析した58例中22例が170kDa(A2ML1)に反応し、COS7 cell lineの培養細胞抽出液を基質としたIP-IBでは58例中40例がA2ML1に反応し、抗A2ML1自己抗体がPNPの病原性自己抗体の一つである可能性を示唆した。随伴腫瘍を摘出した1例で摘出腫瘍の培養細胞上清とヒト表皮抽出液を用いたIBを行ったところ210kDに反応し、随伴腫瘍による自己抗体産生の可能性を示唆した。
4: 遅れている
PNPは比較的稀な疾患であるため、研究実施中の新規患者登録がなかった点が理由の一つとして挙げられる。また、解析中の症例は他施設から抗体検索依頼された症例が大半を占めており、それらの症例での随伴腫瘍の凍結保存がなされていない点も原因の一つであり、また当院で腫瘍摘出を施行した症例での腫瘍組織の凍結保存例も1例のみであることから、随伴腫瘍から培養した腫瘍由来細胞上清と表皮抽出液を用いた免疫ブロット法や免疫沈降法による随伴腫瘍からの自己抗体産生の可能性についての検討が十分に行えていない。同様にPNPに閉塞性細気管支炎を合併した症例の渉猟ならびに気管支および肺組織の試料収集が進んでいないため、病理組織学的解析が未実施である。研究機器の一つであるFlowcytemetryの導入が遅れた点。
引き続き、新規PNP患者の渉猟に努め、同時に当院で解析中の104例につき、国内外の他施設から依頼された症例において、随伴腫瘍摘出の有無ならびに摘出腫瘍の凍結保存の有無につき未確認の症例に対して詳細の確認を進める。
すべて 2013
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
J Invest Dermatol
巻: 133 ページ: 1785-1793
10.1038/jid.2013.65