従来の組織形態学的分類に基づきTissue micro Arrayを作成し、non-melanoma skin cancerのHER2とHER Family(EGFR、HER3、HER4)蛋白の過剰発現について免疫組織化学染色を用いて網羅的に探索したが、HER2と他のHER Familyとの関連や標的となる特徴は見出せなかった。原発巣と転移巣でのHER2 発現率の関係を明らかにすることで、特に進行した乳房外Paget病でのHER2 発現の状態を知ることができるため、リンパ節転移を有する症例(n=26)のHER2解析を行った。遺伝子増幅を認めた症例を陽性としたときの原発巣とリンパ節転移でのHER2ステータスの一致率は92%(kappa coefficient 0.75)と良好であった。しかしながら、Heterogeneityを示す症例が少数ながら見られた。 本研究はHER2の検査および評価を標準化して行った。更にこれまでに検討されていなかった乳房外Paget病転移症例26例を用いて初めてHER2蛋白の過剰発現と遺伝子増幅検査を原発巣と転移巣で評価した研究となった。in situ hybridization 法として、DISH法はFISH法と同様に評価できる可能性が示唆された。また、本研究の成果により、乳房外Paget病でも乳がんと同様の治療アルゴリズムを適応できることが示唆された。 今後は他施設との共同研究を行い、抗HER2抗体治療アルゴリズムの検証を行う。医師主導臨床試験を行う場合には、本研究の結果が重要な基礎データとなり、アルゴリズムが患者選択基準に採用されることが期待できる。 分子標的治療を開発するにあたり、前臨床試験が不可欠と考え、最終年度に細胞株の樹立を目指したが、HER2陽性乳房外Paget病の細胞株は樹立できず、これも今後の課題である。
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