研究実績の概要 |
平成25年度末までに、健常者11名(女性3名)未服薬の大うつ病患者11名(女性6名)の撮像を行った。この検討では、未服薬のうつ病患者は健常者と比較して右腹側線条体の活動が低下していた。また健常者では高報酬に対して腹側線条体がより強く活動するが、うつ病患者ではこのような活動の高まりが欠如していた。(repeated ANOVA, p=0.03)一方で、ストレス、気質、人口統計学的特徴と腹側線条体の活動の相関は認められなかった。平成25年度末から平成26年度始めにかけて、撮像を行っていた当大学医歯学中央研究棟の1.5TMRI装置が老朽化にともない3TMRI装置と入れ替えが行われた。再稼働後の平成26年度に撮像した健常者37名での解析において、高報酬予告時の腹側線条体の有意な活動の亢進を確認した。(FWEp<0.01)また、ストレス、気質、人口統計学的特徴に関するデータが同時に得られた健常者18名の解析において、腹側線条体活動は、肯定的成人期ライフイベントの体験(評価)と正に相関した。(r=0.49)我々の別の研究から一般成人において、肯定的成人期ライフイベントは気質による抑うつ症状の増強を抑制する効果があることが分かっている。このことから、腹側線条体の活動が高いと、抑うつ症状が増強しづらくなることが間接的に示唆された。一方で、腹側線条体の活動は不安気質(r=0.55)、抑うつ症状(ほぼ全例で閾値下)(r=0.51)とも正の相関を示しており、この点は我々の予想とは異なる結果となった。ただいずれも健常者の結果であり、特にストレス、気質、人口統計学的特徴については被験者数も充分でないことから、今後さらに被験者数を増やすことが必要である。また今後は新規装置でのうつ病患者の撮像を行い、当初の目的である腹側線条体機能とうつ病、難治性うつ病、ストレス、気質との関連を明らかにしていきたい。
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