研究課題
若手研究(B)
研究目的(1)オレキシン神経が障害されるために起こる2次性の過眠症の病態を検討し、アクアポリン4(AQP4)関連の疾患概念を確立すること。(2)視床下部に病変がある2次性の過眠症での髄液ヒスタミン値を検討し、過眠症状の指標となり得るか検討する。研究成果(1)これまでに20例を検討している。頭部MRIでは全例に間脳・視床下部周辺の両側性・左右対称性病変を認めた。睡眠学的にはいずれも過眠症状を呈していたが、情動脱力発作を呈した症例はいなかった(いずれの症例も早期に治療をしたことが情動脱力発作の発症を阻止した可能性がある)。髄液オレキシンは低値が6名、中間値が14名であった。これら髄液オレキシン値は、免疫抑制療法後にいずれも正常化した。間脳・視床下部と第四脳室周囲にはAQP4が高発現するため、この抗体を介した免疫学的機序による障害が生じ、さらに同部位に存在するオレキシン神経も二次的に障害され、ナルコレプシーを来している可能性が考えられた。症候性ナルコレプシーの原因としてAQP4抗体を考慮すべきであることを示すとともに、早期に診断し不可逆的な障害が生じる前に、ステロイドや免疫抑制療法などの治療介入することが重要であると考えられた。またVB1不足によって生じるWernick脳症において、間脳・視床下部周辺の両側性・左右対称性病変が生じることがある。そのような症例において過眠症状を呈して、髄液オレキシンも測定限界以下の低値を示した例を経験した。VB1の補充により画像所見、過眠症状とオレキシン値は改善を認めた。画像所見はAQP4抗体が陽性の群と似通っているとは考えていたが、病態機序については別個のものと考えていた。文献検索を行ったところ、Wernick 脳症において認められる第3脳室周囲域の病変もAQP4に対するVB1不足によって起こりうるとの研究報告があり(Chan2004)、AQP4関連により2次性の過眠症が起こる病態の1つであると考えられた。
2: おおむね順調に進展している
研究成果(2)ヒスタミンに関しては、パーキンソン症候群に含まれる、MSA(多系統萎縮症:59例)、PSP(進行性核上性麻痺:4例)、CBD(大脳皮質基底核変性症:3例)を検討した。オレキシン値は199-345pg/mlと正常範囲内であったが、ヒスタミン値はMSAが平均で2600pg/mlであったのに比べて、PSPは351pg/ml、CBDは306pg/mlと低値であった。またオレキシン値とヒスタミン値に相関は認められなかった。パーキンソン症候群に含まれる、MSA、PSP、CBDであるが、MSAはシヌクレオパチーであるのに対して、PSPとCBDはタウオパチーであり、その違いがヒスタミン値の差となって現れているのでは無いかと考えて現在検討を進めている。当初の計画よりは症例数は少なめではあるが、統計学的検討を行う症例数は集まっており、病態機序の検討は可能であると考えている。
今後とも計画に沿って、多数例の症例を集積して、脳脊髄液中の測定実験等をすすめて行く予定である。症例数確保のために近郊の病院や国内の医療機関に協力を依頼する。
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