研究課題
研究目的(1)オレキシン神経が障害されるために起こる2次性の過眠症の病態を検討し、抗アクアポリン4(AQP4)抗体関連の疾患概念を確立する(2) 視床下部に病変がある2次性の過眠症での髄液ヒスタミン値を検討し、過眠症状の指標となり得るか検討する。研究成果(1)これまでに40例を検討している。いずれも過眠症状を呈していたが、情動脱力発作を呈した症例はいなかった。髄液オレキシンは低値が15名、中間値が25名であった。これら髄液オレキシン値は、免疫抑制療法後にいずれも正常化した。間脳・視床下部と第四脳室周囲にはAQP4が高発現するため、この抗体を介した免疫学的機序による障害が生じ、同部位に存在するオレキシン神経も二次的に障害され、過眠症・ナルコレプシーを来している可能性が考えられた 。稀にではあるがWernick 脳症において、間脳・視床下部周辺の両側性・左右対称性病変が生じることがある。そのような症例において、過眠症状を呈して、髄液オレキシンも測定限界以下の低値を示した症例を経験した。VB1の補充によって、画像所見と過眠症状とオレキシン値は徐々に改善を認めた。Wernicke脳症において認められる第3脳室周囲域の病変もAQP4に対するVB1不足によって起こりうるとの研究報告があり(Chan2004)、AQP4抗体関連により2次性の過眠症が起こる病態の1つであると考えられた。(2)ヒスタミンに関しては、パーキンソン症候群に含まれる、MSA(多系統萎縮症:59例)、PSP(進行性核上性麻 痺:4例)、CBD(大脳皮質基底核変性症:3例)を検討した。オレキシン値は199-345pg/mlと正常範囲内であったが、ヒスタミン値はMSAが平均で2600pg/mlであったのに比べて、PSPは351pg/ml、CBDは306pg/mlと低値であった。またオレキシン値とヒスタミン値に相関 は認められなかった。MSAに比べるとPSPの過眠症状は強いことを反映している可能性を考えている。
すべて 2014
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Experimental Neurology
巻: 261 ページ: 744-751
10.1016/j.expneurol.2014.08.004.