研究課題
若手研究(B)
統合失調症患者におけるドパミン過感受性精神病(DSP)は抗精神病薬治療によって惹起されるドパミンD2受容体(DRD2)のアップレギュレーションが関係している。臨床的には不安定な陽性症状や遅発性ジスキネジア(TD)として観察され、治療抵抗化(TRS)の原因となり得る。我々は1)TRS患者におけるDSPの頻度調査(3施設における多施設研究)を実施し、同意取得後の面接と診療録レビューから、150名のTRS患者において、約70%の患者が過去に何等かのDSPエピソードを経験していることを見出した。一方DSPエピソードを経験しない30%の患者においては高率にdeficit症候群が該当した。この結果はTRS患者においてDSPが大きな影響を与えていることを示唆し、またTRS患者が統合失調症の病型や経過において幾つかのサブタイプに分けられる可能性を示すものと考えている。また2)DRD2の内在化に関与するGRK6及びARRB2の遺伝子相関研究(統合失調症341名、健常者357名)において、GRK6上の5SNP、ARRB2上の3SNPを対象にTaqManアッセイ法にて調べたが、いずれのSNPも両群間で差を認めなかった。
2: おおむね順調に進展している
1)疫学調査については2年間で500名の患者調査を予定しているが、初年度に150名のTRS患者調査を終了し、また非TRS患者150名の同意取得まで終了している。2)遺伝子相関解析は予定していた全SNP解析が終了しており、現在臨床データ(DSPの有無)と照らして詳細な検討を行っている。26年度は主に3)血清中のGRK6及びARRB2の測定(ELISA法)を進めて行く予定にある。以上の状況は概ね予定通りのペースで進んでいるものと考えている。
1)疫学調査については、非TRS患者の臨床データから同群におけるDSPエピソードの有無に関して抽出作業を重ね、最終的にTRS患者との比較を実施する予定である。2)遺伝子相関研究は、臨床的にDSPエピソードのあるDSP群と同エピソードの無いNonDSP群などに分け、GRK6及びARRB2のDSP形成への関与の可能性を検討する予定である。3)血清のタンパク定量については現在実施し始めている段階であり、なるべくサンプル数を増やしながら、疾患群と健常群との比較、DSP群とNonDSP群の比較を実施して行く予定である。
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