研究課題/領域番号 |
25860999
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
吉見 陽 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (00637671)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 統合失調症 / オミックス / プロテオーム / トランスクリプトーム / 分子精神医学 / ゲノム医科学 / ゲノム医学 / バイオインフォマティクス |
研究概要 |
研究目的:統合失調症患者由来リンパ芽球様細胞株(LCL)を検体として、網羅的解析(オミックス解析)技術により疾患の分子病態に関わる遺伝子・タンパク質群を同定する。同定された遺伝子・タンパク質群の発現プロファイルから統合失調症と健常者との区別を可能にする統計モデルを考案し、分子病態の理解と、病態に基づく診断・治療法の開発に繋がる成果取得を目指す。 研究方法:統合失調症患者・健常者各30名より末梢血液を採取、ゲノム抽出及びLCL樹立(リンパ球の分離精製後にエプスタイン・バールウィルスにて不死化)を行った。LCLよりtotal RNA・タンパク質を抽出し、網羅的遺伝子・タンパク質発現解析(トランスクリプトーム・プロテオーム解析)により統合失調症に特異的な発現変化を探索した。 研究結果および考察:プロテオーム解析(2D-DIGE法)により、統合失調症に関与しうる分子スポット20個を見出し、質量分析により22種類のタンパク質を同定した。Western blotting法により8種類の発現変化を確認し、独立サンプル群の検証により3種類の発現変化が再確認された。4ないし6因子から成る判別モデルを構築し、外部データ検証により有用性が確認された。また、トランスクリプトーム解析(Exon Array)により、1,115遺伝子、1,327エクソンについて発現量変化が認められ、統合失調症を含む精神神経疾患と関連が深い遺伝子が多く認められ、軸索伸長、イオンチャネル、細胞骨格系など分子病態との関連を示唆する遺伝子群が見出された。 これまでの研究成果として、統合失調症の病態像を反映しうる遺伝子・タンパク質群が抽出されつつある。今後、さらなる詳細な定量解析、判別モデルの構築及び再現性・妥当性検証を行い、同定された候補遺伝子・タンパク質の分子機能を明確化にするための生物学的情報を統合することが重要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
リンパ芽球様細胞株(LCL)の樹立とその網羅的解析(オミックス解析)は順調に進んでおり、トランスクリプトーム・プロテオーム解析のデータ収集を完了した。オミックス解析データの確認を別法(Western blotting法、qPCR法)により進めており、おおむね完了している。今後は得られたデータの統計学的検証を進め、より有用な判別モデル構築とその構成因子についての追加検証が必要である。全体として年次計画に基づき疾患を特徴づける遺伝子・タンパク質の発現変化を補足することができており、おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
1.トランスクリプトーム解析:統合失調症の病態に関わる遺伝子群を統計学的に選別し、判別モデル構築とその有用性検証を行う。 2.プロテオーム解析:候補タンパク質群について、統合失調症の病態生理に関わる分子機能を生物情報学(in silico)、細胞生物学(in vitro)、動物モデル(in vivo)などの知見から詳細を検討する。 3.全ゲノム関連解析:リンパ芽球様細胞株(LCL)の提供者のゲノムをSNPアレイにて解析し、候補遺伝子・タンパク質群の発現調節に関わる遺伝子座位を探索する。 4.バイオインフォマティクス:候補遺伝子・タンパク質群の分子機能情報を統合し、統合失調症の分子病態への関連性を検証する。また、疾患判別モデルの考案、診断・治療法に有用なバイオマーカーの開発について検証を行う。 (次年度の計画)トランスクリプトーム解析・プロテオーム解析より得られたデータの追加検証、全ゲノム関連解析の実施、候補遺伝子・タンパク質群の分子機能の確認を中心に研究を遂行する。
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