研究課題/領域番号 |
25861000
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
岩本 邦弘 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (50569796)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | うつ病 / 社会機能 / 社会復帰 / 運転技能 / 向精神薬 |
研究概要 |
本研究の目的は,うつ病患者の社会機能を向上させる要因を明らかにすることであり,社会機能の一つとして,具体的な日常生活動作である自動車の運転技能に着目している。研究遂行のために,先ず,社会復帰準備中のうつ病患者の運転技能を評価し,健常対照群の運転技能成績との比較を行い,うつ病患者の運転技能の実態を把握すること,次に,同時に評価する認知機能検査や症候学的な評価が運転技能にどのように影響するかを明確にすること,さらに,患者が内服する向精神薬によって,運転技能成績が異なるのかを調べることを企図した。 初年度については,抗うつ薬治療中の部分寛解にある大うつ病性障害患者30名を対象に,ドライビングシミュレータを用いて,追従走行課題,車線維持課題,飛び出し課題の,日常運転に必要な運転技能の3 要素を評価した。また、 認知機能検査として,Continuous Performance Test,Wisconsin CardSorting Test,Trail Making Testの3 課題を行った。さらに,Hamiltonうつ病評価尺度,Beckうつ病自己評価尺度,社会適応度自己評価尺度,Stanford 眠気尺度で症候学的評価を行った。内服している処方薬についても調査した。対照群として,日常的に運転を行い,問診と精神科診断面接により,精神障害を有さないことを確認した健常者30名を対象に,うつ病患者群と同様の評価を行った。 少数例ではあるが,予備的な解析を行った所,うつ病患者群では,健常対照群と比較し,一部の認知機能検査成績については有意に低下していたが,運転技能については統計学的に有意に異ならないことが示唆された。証左に基づいた社会復帰の在り方を議論する上でも,重要な成果であると考えられるが,サンプル数を拡大し,次年度においても検証を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
社会復帰準備中のうつ病患者および健常対照群の目標サンプル数は各100名であるが,初年度においては各30名までの収集となった。関連施設においてもサンプリング収集を行い,その体制整備に時間を要したため,研究計画はやや遅れたが,その後は概ね順調に進んでいる。また,初年度の研究実績においては,有害事象などは認めず,被験者にも配慮しながら,安全かつ的確に研究が実施できた。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に引き続き,次年度についても100症例を目標にサンプリングを継続する。目標サンプル数の半分まで収集が進んだところで,中間解析を施行する。今後もリクルートを継続し,目標サンプルに到達した後に,最終的な解析を行い調査項目を明らかにする。参加者のリクルートのために,当施設および関連施設への協力も呼びかけ,研究が推進するように対策を行っている。
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次年度の研究費の使用計画 |
初年度については,研究参加者のリクルート体制の構築が急務であり,関連施設との研究打ち合わせや情報収集活動が多く,サンプリング活動の開始には時間を要した。その為,データベース用ワークステーションや実験補助者の謝金の支出が遅れ,次年度使用額が生じた。 研究参加者のリクルート体制が構築でき,サンプリング活動が進むようになったため,研究参加者の謝金,データベース用ワークステーション,実験補助者の謝金に対して使用する計画である。また,研究成果が出始めているため,成果発表のための旅費に使用する予定である。
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