研究課題/領域番号 |
25861000
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
岩本 邦弘 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (50569796)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | うつ病 / 社会機能 / 社会復帰 / 運転技能 / 向精神薬 |
研究実績の概要 |
うつ病患者の社会機能の一つとして、具体的な日常生活動作である自動車の運転技能に着目し、先ず、健常対照群との比較において、うつ病患者の運転技能の実態を把握し、次に、運転技能と認知機能検査や症候学的評価との関係を調べた。 本年度までに、抗うつ薬治療中の部分寛解にある大うつ病患者65名までをリクルートした。研究参加者は運転免許を有し、日常的に運転を行っていることを確認している。運転技能の評価として、運転シミュレータを用いて、追従走行課題、車線維持課題、飛び出し課題の、日常運転に必要な運転技能の3要素を評価した。また、認知機能検査として、Continuous Performance Test、Wisconsin Card Sorting Test、Trail Making Testの3 課題を行った。さらに、Hamiltonうつ病評価尺度、Beckうつ病自己評価尺度、社会適応度自己評価尺度、Stanford 眠気尺度で症候学的評価を行った。内服している処方薬についても調査をした。対照群として、日常的に運転を行い、精神科診断面接により、精神障害を有さないことを確認した健常者57名を対象に同様の評価を行った。 うつ病患者は大部分が寛解しており、ハミルトンうつ病評価尺度で5.0±4.5 点であった。処方内容は、新規抗うつ薬を中心に抗うつ薬単剤率が75%、ベンゾジアゼピン併用率が62%、抗精神病薬併用率が31%であった。運転課題成績いずれも、うつ病患者群と健常者群とに統計学的有意差は認めなかった。Wisconsin Card Sorting Testの成績がうつ病患者群で有意に低下していた。運転技能と注意機能や社会適応度に有意な相関を認めたが限定的であった。本研究の一部は関連する学会にて報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初、目標症例数は100とし、関連施設においてもサンプリングを行い、現在までに目標の7割程に達している。しかし、対象症例の収集が頭打ちになったために、サンプリングの速度が低下し、目標症例数には到達しなかった。今後も関連施設との連携を強化し、サンプリングを継続する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度も目標症例数を目指して、関連施設とも連携をとりサンプリングを継続するが、約70症例という一定のサンプル数を確保したため、サンプル拡大ばかりに注力するのではなく、解析についても順次行い、研究目的を遂行することを企図している。
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次年度使用額が生じた理由 |
サンプリングが頭打ちになったために、研究参加者謝金や実験補助者の謝金の支出が遅れ、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
研究参加者のリクルート体制をより強化するために、関連施設との連絡、打ち合わせを増やし、サンプリング活動が円滑に進むように計画する予定である。また、それに応じて、研究参加者謝金や、実験補助者の謝金に対して使用する計画である。また、解析を順次行い、成果発表の旅費や英文論文化に対する準備にも使用する予定である。
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