研究課題
若手研究(B)
本研究では、環境により変化する自己の意欲を持って出力される行動に関わる自発的情動性が、脳を介してどのように処理・修飾されるかを分子レベルで解明することを目指す。1.本年度は、外部環境、特に光環境の変化により最終的な出力系である行動にどのような変化が起こるかを、オープンフィールドテストおよび自発的活動量の測定ならびにスクロース消費テストを用いて解析した。3週間の通常明暗サイクル条件または恒常明条件下にてマウスを飼育した後、それぞれのマウス群を用いて、オープンフィールドテストおよびスクロース消費テストを行った。オープンフィールドテストでは両グループにおいて顕著な差は見られなかったが、スクロース消費テストでは恒常明条件下にて飼育したマウスにおいて通常明暗サイクル条件下のマウスに比べて、有意なスクロース消費量の減少が見られた。このことは、光環境の違いにより、意欲を持って出力される行動に変化をもたらすことを示している。2.外界の環境と体内のリズムを同調させる機構は概日リズムシステムにより制御されている。我々は、新たに発見した時計遺伝子Chronoのノックアウトマウスにおいて、拘束ストレス後の血清中コルチコステロン量の上昇すること、さらにストレス反応依存的にChronoの遺伝子発現量が上昇することを明らかにした。このことは、外部ストレスと概日リズムの時計遺伝子が密接に関わっていることをあらわしており、外部環境と体内の生理現象の調節において、概日リズムシステムが大きく寄与していることを示している。
1: 当初の計画以上に進展している
一年目の計画予定であった行動学的解析を一通り検討した。また新たに発見した時計遺伝子Chronoのノックアウトマウスにおいて、外部ストレスとの関係性を明らかにすることができ、これらの結果をPLOS Biologyにpublishすることが出来た。
計画書どおり、外部環境により変化する生理ネットワークの解析を行う。すでに候補となる遺伝子のノックアウトマウスは入手している。また、1年目で変化が見られた意欲に関わる脳部位における遺伝子発現の変化や、血中ストレスホルモンなどの測定を行う。また、1年目で見られた行動変化において、その外部環境に暴露される感受性期の有無について検討する。
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PLoS Biology
巻: 12(4) ページ: -
10.1371/journal.pbio.1001839