研究課題
【背景】大うつ病性障害(MDD)の病態には遺伝子発現や脳機能の変化など生物学的要因の関与があり、同じ抑うつ状態であってもストレスによって生じた適応障害とは病態が異なるが、これを明瞭に鑑別できるバイオロジカルマーカーは存在しない。本研究では、MDDに加えて遺伝的・生物学的要因をより強く受ける双極性障害と、心理社会的ストレスの影響を強く受ける適応障害とを対象として末梢血中の遺伝子発現とNIRSの結果の違いを基に気分障害と適応障害の鑑別を試みた。【方法】年齢、性別、利き手、知能指数が統計的に一致している双極性障害患者20名、MDD患者25名、適応障害患者18名、健常者23名を対象とした。全被験者から採取した末梢血中のSRp20mRNA発現量を測定し、NIRSのverbal fluency task(VFT)課題を施行した。SRp20mRNA発現量はGAPDHで補正し、一元配置分散分析の後、Dunnett testの多重比較検定を行い4群間で比較した。NIRSについては課題中の[oxy-Hb]の変化グラフから、積分値、重心値、傾きを求めて4群間で比較した。また、平均[oxy-Hb]変化量をチャンネルごとにt-検定を用いて2群間比較し、FDR補正を行った。【結果】SRp20mRNA発現量については4群間で有意差を認めなかった。NIRSについては、積分値、重心値、傾きに関して4群間で有意差を認めなかった。平均[oxy-Hb]変化量のついては、健常者群に比べてMDD患者群と適応障害患者群で有意に賦活の悪いチャンネルが認められたが、チャンネルのパターンが異なっていた。双極性障害患者群では他の群に比べて有意差のあるチャンネルは認められなかった。【考察】今回の結果から、VFT中の脳の賦活部位の違いによってMDDと適応障害を鑑別できる可能性が示唆された。
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