研究課題
強迫性障害(OCD)は神経生物学的病因として、前頭葉-視床-線条体回路の調整障害が提唱されている。神経心理学的検査においてもOCDでは多くの機能異常が指摘されている。ワーキングメモリは認知課題を遂行する際に一時的に情報を保ちつつ必要に応じてそれを取り出す機能であり、主に前頭葉や頭頂葉といった脳部位がその機能を担っていると考えられる。そこでOCD群と健常群、OCD群における治療前と治療後におけるワーキングメモリの変化と脳賦活部位の変化を調査することで、本疾患の脳神経学的な病態解明につながることが期待された。本研究ではOCD13名、コントロール17名でファンクションMRI(以下fMRI)撮像下に視覚的ワーキングメモリ課題であるN-back test(taskは2-back)を施行し、脳賦活部位の違いを比較した。またOCD群は治療の前後で同様の撮像を行い、脳賦活部位の違いを比較した。N-back正答率は健常群とOCD群治療前では有意差は認めなかった。画像解析結果は、健常群と比較し、治療前OCD群では左下頭頂葉で賦活が低く、左中前頭回、右楔前部、右上前頭回、左下頭頂葉、右下頭頂葉において賦活が高かった。OCD群における治療前後での比較では、左下頭頂葉、左上頭頂葉、右楔前部、左中前頭野で治療前と比べて治療後における脳賦活が低下していた。一方、治療前と比較し治療後に脳賦活が上昇していた部位は認めなかった。OCDではワーキングメモリの中央実行系である背外側前頭前野や前帯状回の機能低下を補うために前頭葉-頭頂葉ネットワークが過活動になっており、治療によってその過活動が収束する可能性が示唆された。
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臨床精神薬理
巻: 17 ページ: 1525-1534
Psychiatry Clinical Neuroscience
巻: Epub ahead of print ページ: ahead of print
10.1111/pcn.12269