研究課題/領域番号 |
25861020
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
矢田部 裕介 熊本大学, 医学部附属病院, 助教 (50508637)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 色情 / BPSD / 認知症 |
研究概要 |
認知症患者では様々な精神症状・行動障害(BPSD)が種々の頻度で認められる。性的脱抑制や性欲亢進からなる色情は介護破綻や施設退所の原因となりやすいBPSDであるが、認知症の各背景疾患との関係やそのメカニズムはあまりよく知られていない。そのため、効果的な治療やケアの手法もいまだ確立していない。本年度は認知症外来受診連続例に対して色情の有症率、色情と関連する要因を検討した。対象は熊本大学医学部附属病院神経精神科認知症専門外来を受診した連続431名(女性273名、男性158名、平均年齢76.4歳、平均MMSEスコア18.9点)とした。独自に作成した半構造化面接方式の性行動障害評価尺度を用いて色情の有無を聴取し、同一日にMMSE、Neuropsychiatric Inventory-12(NPI-12)を施行した。これらの評価をもとに各疾患における色情の有症率を算出した。さらに、色情の有無を目的変数とし、性別、年齢、教育年数、罹病期間、MMSEスコア、NPI-12スコア、NPI-12各下位項目症候の有無、抗パーキンソン病薬服用の有無、コリンエステラーゼ阻害薬服用の有無を説明変数としたロジスティック回帰分析を行った。その結果、対象全体では3.7%(431名中16名、女性4名、男性12名)に色情を認めた。疾患別ではレビー小体病が47名中4名(8.5%)と最も高頻度で、次いで前頭側頭葉変性症(4.3%)、血管性認知症(2.9%)、アルツハイマー病(2.1%)の順であった。ロジスティック回帰分析では、男性、MMSEスコアが高い、妄想の存在、興奮の存在、抗パーキンソン病薬の服用、コリンエステラーゼ阻害薬の服用が色情を説明する要因として抽出された。本研究の結果から認知症患者の色情に関連する幾つかの要因が示唆された。本研究結果をもとに色情への標準的対応法を構築していく必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の研究実施計画に掲げた①hypersexuality評価尺度の開発、②開発した尺度を用いて各認知症性疾患におけるhypersexualityの有症率、性行動パータンの特徴を明らかにするという目的は概ね達成した。一方で、当初、hypersexuality評価尺度の標準化を予定していたが、平成25年度中に実施できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度の研究結果をまとめ、国内外の学会にて成果報告を行うとともに、論文として発表する。さらに、認知症性疾患におけるhypersexualityの神経基盤の検討を行う。アルツハイマー病(AD)、血管性認知症(VaD)、レビー小体型認知症(DLB)、前頭側頭葉変性症(FTLD)の国際的な臨床診断基準を満たす症例に対して、SPECTならびに性行動評価尺度、以下の神経心理検査、行動神経学的検査を実施する。疾患ごとに性行動評価尺度と神経心理検査、精神症状・行動障害評価尺度の結果を検討し、hypersexualityと認知機能、他の精神症状との関連性を検討する。さらに、hypersexualityと脳血流低下パターンとの関連性を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
統計解析に使用予定であった統計解析ソフトウェア(PASW Statistics メデ ィカルモデル/51万7千円)の購入を保留とした。また、情報収集目的で参加予定であった国際学会に他業務のため参加できず、当該助成金が生じた。 画像解析を行うためのデスクトップ型コンピュータ及び、ディスプレイを購入する予定である。併せて初年度に購入予定であった統計解析ソフトウェアを購入する。その他、研究打ち合わせならびに研究成果の発表のための旅費、各種消耗品、外国語論文の校閲に使用予定である。
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