研究課題/領域番号 |
25861020
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
矢田部 裕介 熊本大学, 医学部附属病院, 非常勤診療医師 (50508637)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 色情 / BPSD / 認知症 / アルツハイマー病 |
研究実績の概要 |
認知症患者では様々な精神症状・行動障害(behavioral and psychological symptoms of dementia:BPSD)が種々の頻度で認められる。性的脱抑制や性欲亢進からなる色情は介護破綻や施設退所の原因となりやすいBPSDであるが、認知症の各背景疾患との関係やそのメカニズムはあまりよく知られていない。そのため、効果的な治療やケアの手法もいまだ確立していない現状がある。平成25年度に実施した研究において、認知症の背景疾患ごとに色情の頻度が異なることがわかったため、疾患を統制したうえでの解析が必要であると考え、本年度はアルツハイマー病(Alzheimer’s disease:AD)をターゲットとした研究を行った。2010年4月から2011年8月の期間に熊本大学医学部附属病院神経精神科認知症専門外来を受診したprobable ADの連続例(N=288)を対象に、半構造化面接方式で色情の有無を聴取し、有症率を算出した。また、色情の有無を目的変数とし、性別、年齢、教育年数、罹病期間、Mini Mental State Examination(MMSE)スコア、Neuropsychiatric Inventory(NPI)スコア、コリンエステラーゼ阻害薬服用の有無を説明変数としたロジスティック回帰分析を行った。その結果、対象288名中6名(2.1%)に色情を認めた。ロジスティック回帰分析では、男性、罹病期間が短い、コリンエステラーゼ阻害薬を服用中であることが色情を説明する要因として抽出された。本研究の結果からADの色情は軽症時期と重症時期の二峰性の好発時期を示す可能性が示唆された。また、コリンエステラーゼ阻害薬服用時に色情を呈した場合はその減量中止を検討すべきであると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成26年度は画像解析を予定していたが、解析可能な例数に達しなかった。このため、最も例数の多かったアルツハイマー病にターゲットを絞り、人口統計学的及び症候学的解析を行った。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度及び平成26年度の研究結果をまとめ、論文として発表する。可能な限りHypersexualityを呈するアルツハイマー病、血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭葉変性症例を蓄積し、hypersexualityと認知機能障害、精神症状、脳血流低下部位との関連性を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
情報集目的で参加予定であった国際学会に業務の都合上参加できず、当該助成金が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
研究成果発表のための旅費、各種消耗品、外国語論文の校閲に使用予定である。
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