研究課題
認知症患者では様々な精神症状・行動障害(behavioral and psychological symptoms of dementia:BPSD)が種々の頻度で認められる。性的脱抑制や性欲亢進からなる色情は介護破綻や施設退所の原因となりやすいBPSDであるが、認知症の各背景疾患との関係やそのメカニズムはあまりよく知られていない。そのため、効果的な治療やケアの手法もいまだ確立していない現状がある。平成25年度、26年度に実施した研究において、色情に関連する様々な要因が抽出されたが、平成27年度は色情と介護負担の関連について調査を行った。熊本大学医学部附属病院認知症専門外来を受診したprobable Alzheimer’s disease(AD)の連続例(N=288)から、Mini Mental State Examination(MMSE)が15点以上の軽症から中等症の患者(N=219)を対象とした。半構造化面接で色情の有無を聴取し、Zarit介護者負担尺度(ZBI)を用いて介護負担度を調べた。色情有り群(N=6、男性:女性=1:5、平均年齢=75.5歳、平均MMSEスコア=20.5)と色情無し群(N=213、男性:女性=66:147、平均年齢=77.4歳、平均MMSEスコア=21.1)との間で、患者背景に統計学的有意差は認めなかった。色情有り群の平均ZBIスコアは20.8点、色情無し群の平均ZBIスコアは17.6点であり、色情有り群においてZBIスコアは高かったが、統計学的有意差は認めなかった(P=0.534)。この結果は、軽症から中等症のADでは色情の有無により介護者の負担感に差はない可能性を示唆する。一方で、色情有り群のサンプルサイズが少なく、今後、症例の蓄積や重度AD例での検討、レビー小体型認知症や前頭側頭葉変性症など他の認知症性疾患での介護負担度の検討が必要である。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件)
Dementia and Geriatric Cognitive Disorders
巻: 5(2) ページ: 244-252
10.1159/000381800
Psychogeriatrics
巻: 15(4) ページ: 242-247
10.1111/psyg.12108