パニック症の脳構造、自律神経機能、内分泌機能などの変化を研究し、病態を解明することを目的とした研究を行っている。パニック症の脳病態には扁桃体や海馬、帯状回や島回といった脳領域の関与が考えられている。1.5T-MRIデータを用いた解析ではパニック症においてこれらの脳領域を連絡する白質容積に変化が認められることを見出し、論文報告を行った。また、容積変化が認めないとされていた海馬に関しても、亜区域に分けた解析を行ったところ、右海馬のCA4/5領域に容積減少が認められることを発見し、日本不安症学会で報告した。また、前頭葉眼窩皮質や後頭葉の皮質の厚みが薄くなっていることを発見した。さらに、扁桃体や海馬、側坐核や尾状核、視床などの皮質下脳領域において、それらの形状に群間差が認められることを見出した。H26年度より当院に導入された3T-MRIを用いた研究に関しては、21例のパニック症、19例の健常群から脳画像データを収集するとともに、自律神経機能や内分泌機能のデータも収集した。1.5T-MRIデータと同様であり、パニック症において前部帯状回や前頭葉眼窩面において有意な灰白質容積の減少が認められた。また、これらと不安尺度やパニック症の重症度との関連が認められることが判明した。自律神経機能は交感神経機能副交感神経機能とを評価したが、パニック症と健常群ではとくに群間差は認められなかった。また、脳容積との関連も認められなかった。内分泌機能検査に関しても同様であり、パニック症と健常群での群間差は認められず、内分泌機能と脳構造との関連も認められなかった。
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