研究課題
若手研究(B)
薬剤抵抗性うつ病に対して高い抗うつ効果の期待できる時間生物学的治療のプロトコールを作成した。最新の研究報告に基づき、本治療プロトコールでは、1日おきに計3回全断眠を行い、断眠の抗うつ効果維持のため高照度光療法も初回断眠時より1週間行うことにした(10,000ルクスの白色光を毎朝30分照射)。現在までに2名の薬剤抵抗性うつ病患者に対して上記の治療プロトコールを実施したが、いずれにおいても脱落、有害事象の発現なく終えている。断眠中はテレビを観るなどして自由に過ごさせたが、覚醒の維持に対して特別な介入は不要であった。本治療プロトコール実施により、21項目版ハミルトンうつ病評価尺度(HAM-D)の得点は、1例目で14点から5点に、2例目で20点から8点に減少し、いずれにおいても有効であった。治療プロトコール終了後も効果の持続性について調査するため、現在1月おきにHAM-Dによる症状評価を行っている。本研究においては、断眠の抗うつ効果が大脳皮質休息機構の正常化を介して生じるという仮説を検証するため、断眠翌日の回復睡眠時の脳波を携帯型ポリグラフ装置で記録している。今後、症例が蓄積された際には、臨床経過との関係について解析する予定である。国内で複数回断眠の治療プロトコールが実施されたのは今回が初めてであったが、日本人のうつ病患者においても安全に実施でき、かつ有効であることを学術集会および学術雑誌にて発表した。
3: やや遅れている
研究の実施にあたり、直ちに必要な機器備品の購入を手配したが、納品までに時間を要した。また、病棟で覚醒療法を実施するにあたり、病棟スタッフに対して説明会を行う必要があったが、その日程調整にも時間を要し、速やかに研究を開始することが出来なかった。本研究の対象は、日本大学医学部附属板橋病院精神神経科に通院ないし入院中の気分障害患者であるが、医師及び患者に対して本研究を周知することが出来ず、予定していたペースで症例を集めることが出来なかった。
研究体制は整っているため、症例数を増やすことが今後の課題である。外来および病棟で診療に従事している医師に対して説明会を行い、該当患者がいる場合には速やかに紹介してもらえる体制を整える。また、外来や病棟にパンフレットを置くなどして、患者に対しても本研究について広報し、患者側からも研究参加について申し出が出来るようにする。
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