研究概要 |
エタノールによるアルコール依存症発症と報酬系神経回路におけるCl-濃度調節機構変化の相関性についてエタノール誘発性アルコール依存症モデルを用いて行動薬理学的、神経科学的観点から検討を行うとともに、エタノールによる細胞内Cl-濃度調節機構への影響を神経細胞を用いて検討を行った。 行動薬学試験においてエタノールを4日間空気曝露し、その後3日間休薬することを2回繰り返すことによって、エタノール嗜好性マウスの作成を行った。嗜好性獲得の評価は2ボトル法を用いて行った。条件付けされたマウスは対照群と比較して有意にアルコール摂取量の増加が認められた。現在、エタノール嗜好性マウスおよび対照群を用いて報酬系神経回路におけるCl-濃度調節機構の神経化学的変化を検討中である。 また、マウス胎児大脳皮質より、マウス初代培養神経細胞を分離培養し、神経細胞におけるエタノールによるCl-濃度調節機構の変化について検討を行った。ウェスタンブロット法およびリアルタイムPCR法を用いてCl-濃度調節機構の変化を検討したところ、エタノールにより、Cl-ポンプであるNKCC1およびKCC2の発現に有意な変化は認められなかった。そこでGABA(A)受容体alphaサブユニット(1,2,3,4,5,6)のmRNAの発現変化をリアルタイムPCR法を用いて検討したところ、alpha6サブユニットに有意な発現増加が認められた。GABA(A)受容体alpha6サブユニットのプロモーター領域にNFkB family結合サイトが多数存在することから、NFkB familyの核内発現を検討したところ、cRelの有意な発現増加が認められた。このことからエタノールはcRelの核内発現を誘導することでGABA(A)受容体alpha6サブユニットの発現増加させていることが考えられる。現在、神経細胞の機能的変化と合わせて詳細に検討中である。
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